雨が降りそうな暗く淀んだ低い雲の下、誰かの私有地のようなそうでないような、謎の疎林地帯で探鳥が始まった。目当てはターゲット4種のうち3種目になるコパーバックウズラチメドリ。ウズラチメドリ類は全国の僻地に散らばっており基本的には小石混じりの傾斜地を単独で歩いている鳥だ。
変なヒガシキバラヒタキだと思って撮っていたが、実はニシキバラヒタキ。アオムネオーストラリアムシクイと同様にエアー半島中部に西オーストラリア州の野鳥が達して後に断絶し、固有亜種になったパターン。将来的に一種増える可能性もある。
ほとんどの種類がペットとして海外で流通するインコの世界でも、極めて稀なのがこのセイキインコ。よくみんな「セキセイインコ」と読み違える。熱帯とは違い、色彩の薄いオーストラリア南部の野山の中でセイキインコの色合いの存在感にはすごいものがある(ただ結構怖がり)。
アオムネオーストラリアムシクイやニシキバラヒタキと同様にエアー半島中部に西オーストラリア州の野鳥が達しているパターンその3、チャイロキノボリ。この鳥の分布図はたいへん変わっていて、他にこんな変な図を描く野鳥はオーストラリアにはいない。一昔前のイスラム国の支配地域図みたいだ。
ムナグロオーストラリアムシクイ。
というように午後の短時間にも関わらず綺麗な小鳥系がたくさん暮らしているこのポイント。道がなく高低差もないので方向感覚を失いやすく気をつけて居ないと遭難しそうなのが難点だが、素晴らしいポイントだ。ただコパーバックウズラチメドリだけを探しにきている私には、他の鳥をどれだけ見てもあまり関係ない。もう陽が傾いてきているので、残念だけどこの情報があったダム周りから離れ、別のダムの周りを歩いてみることにした。
そしたらいたし!!やったーライファー3種目ゲット!
この後15分ほど、このコパーバックウズラチメドリと我々2名による追いかけっこが続いたが、逃げ足も早く茂みをうまく使い30m以内に入ることさえ難しい。「これでは写真にならん」と作戦を変えることにした。
これを見なさい。これはプレートレットと言って、ウズラチメドリ類やミフウズラ類が採餌するときにできるフィールドサインだ。この辺りは間違いなく彼のホームだ、ここで待っていればいい。それから、彼のコンタクトコールはクリゴシウズラチメドリとかと大体同じだったね?と真似していると
あれだけ逃げ回っていたコパーバックウズラチメドリが一直線に戻ってきた!
プロの野鳥ガイドの経験と知識ってちょっとだけスゴいでしょう?頭の中は世間の人には全くどうでもいい情報と経験で埋まっており、未知の種にもすぐ応用が効く。これくらいになるには年間250日相当のバードウォッチングをオーストラリアで20年続ける必要がある。そんなにできるわけない、という人は毎月毎月ますます引き離されていく。
最終的には、同一の鳥とは思えないくらい私たちの周りをグルグル鳴きながら歩き回ったコパーバックウズラチメドリ。任務3は完了した。今日1日でウエスタンセスジムシクイとコパーバックウズラチメドリという2種類を片付けたのは大きい。あと残すは1種だけだ!とワクワクしながらテントで眠りについた。早く明日になれ!
早く明日になる前に、明け方寒くて苦しんだ。これは外に出していたテーブルについていた吹きこぼれ?凍ってるし
結露が付着したダウンジャケットのフードも凍っていた。普通テントの中は外気よりも4−5度暖かいのが普通だけど
私はテントではなくテープの下で寝ているので保温性はほとんどない。風も通り抜ける。マイナス5度対応の寝袋にインナーダウン、アウターダウン、フリース帽子、ウール手袋、フリースネックウォーマー、フリースズボンにウール靴下で寝ているのだがまだ寒かったのでこの朝はマイナス3度あたりで寝ていたのではと想像する。また同じような気温帯で野宿することがありそうなら、その時は寝袋イン寝袋で対応する。私とアウトドアとの付き合いも30年近くになる。