PLB(携帯型緊急救難信号機)とはオーストラリアで使われている150g程度の小型の発信機で、生命に危険があるような状況下でかつ通常の携帯電話や無線が繋がらないような場所にいる時に起動すると人工衛星を介して消防や救急などへ連絡が行き、PLBが発している位置情報を元に正確で迅速な救助が期待できるというもの。PLBの端末自体は初期投資として3−4万円するけど、公共サービスゆえその後の利用費用は基本的に無料という素晴らしいものだ。
衛星携帯電話のようにメッセージをやり取りしたり会話ができるものがプロの道具であれば、PLBは一般の人が持つべきの有力なツールだ。そりゃあ本体20万円、毎月の基本料金だけで6千円の衛星携帯電話はなんでもできるが、PLBはアンテナを伸ばしてボタンを押したらあとはオーストラリア政府を信じて救助をじっと待っているだけだ。しかし国土の9割が圏外でかつ毒蛇なんてどこにだって潜んでいるような国の山野を歩き回る人間、特に単独で行動している人はPLBくらい義務として持っておいて欲しい。あなたがアウトバックで毒蛇に噛まれたり、滑り落ちて足を骨折し人知れず苦しみながら死亡するのは自由だけど、それを探しに行かされる見ず知らずのオーストラリア人達も同じ危険に晒す。3−4万円のPLBで命が助かった人の話なんてなんと39000件もある(2016年時点)。
PLBの内蔵リチウム電池は7年ほどで切れるので、メルボルンの認定業者に郵送してバッテリーを交換してもらった。単に電池を入れ替えるだけじゃなく、その際に全機能が依然として正しく動作しているかどうかを技術者がチェックし検査結果とともに返送されてくる。だから電池交換は決して安いものではなく25000円くらいかかるのでもう少し足せば新しいPLBを買えてしまうのが惜しいが、まだ使えるものを埋立処分場に送りたくないじゃない?次の電池交換は2030年の1月か。私はこの仕事を辞めたら衛星携帯電話は解約するだろうけど、PLBだけは寝たきりになるまで持っていることだろう。
←PLBには様々な個人情報をオンラインで登録できる。複数の緊急連絡先だったり、所有している車の詳細、旅の計画などなど。登録している携帯には「あと3ヶ月でリチウムバッテリーの寿命ですよ」とかのメールが届く。そしてこれらのサービスの利用はすべて無料である。国土の9割で携帯電話が繋がらないオーストラリアでは、救急セスナ網や高速道路兼滑走路、ボランティア海洋救難団体などこうした分野で世界最高水準の仕組みを有している。
もう一度言おう。日本22個分の国土のうちこの紫の部分だけがオーストラリアで携帯がつながるエリアだぞ。(国内第3位、ボーダフォン)
PLBや衛星携帯電話はレンタルもしてます。借りていってください。自分の命が3万円未満で、捜索隊などに回避可能な必要以上の費用や迷惑をかけても関係ないと思う人には不要ですが。