ここでいうコンプレッサーとは、タイヤに空気を入れるための道具のこと。車に携帯し使用時はボンネットを開けてバッテリーに直結して使う。「なんでそんなものがいる?」と言われると話が長くなるけど、例えば車に数百キログラムを積載して40度の気温の中を未舗装道路を何千キロも走っているとタイヤなんて定期的にパンクする。パンクしたらすぐにスペアタイヤに交換するんじゃなくて、こちらでは治せそうなパンクだったら携行している修理セットで穴を塞ぎ、そして抜けてしまった空気はこういったコンプレッサーで入れてまた走行を続ける。その方がタイヤを外す必要さえない。
スペアタイヤは最後の切り札であって、単純なパンクなんかのために毎回使っていられない。そもそもスペアタイヤも続けてパンクしたら詰むし。JAFだとかガソリンスタンドだとか、何百キロの彼方だし圏外だからなんでも自分でやるんですよ。以前キンバリーへ行った際タイヤ修理キットもコンプレッサーも携行してて、スペアタイヤだって常時2本積んでいても、すれ違う四駆がスペアタイヤを3本屋根に積んでいるのを見て「ヤバい、甘かったかな?」と思った。幸いタイヤが一本吹っ飛んだだけで済んだけど。
というわけで最近まで四駆にはいつもこのコンプレッサーが積んであった。これは2台目。このタイプは空気を入れる速度は速いけどコンプレッサー自身が10kgの重さがあること、バッテリーから電源をとる手間があること、うるさいこと、スペースをとることなどの欠点を抱えていた。あと、僻地でいざ使おうと思ったらヒューズが飛んだこともある。
しかし世の中は2024年になり、リチウム電池を電源としたポータブルタイプのコンプレッサーが出回るようになった。たしかに空気を入れる速度は遅く、昔からあるタイプのコンプレッサーなら10秒で終わるようなエアの継ぎ足しにも1分くらいかかる。5分くらい使うと結構発熱を始めるので、パンクしてペシャンコになったタイヤを一本空気いっぱいにするには多分20分くらいかかる。
これはスマホや家電で知られるシャオミ製で、ケーブルレスな上にとんでもなく小さい。昔からあるタイプのコンプレッサーが10kgくらいありバレーボールくらいのスペースをトランクで取っていたことを考えればその空気を入れる遅さも許される。今ではAAK Nature Watchの全車に一台づつ配備されているのに、日本ではもうスペアタイヤさえ車に備えられていないと聞いて、どこの宇宙人の話かと嘆息したものだ。
私はあまり喋らないし、流行も、芸能も、ファッションもグルメも酒も何一つ知らないが、道端でパンクして困っている人を助けたり、チェーンソーで倒木を切断して道路を開通させたり、河原でスタックしている車をウィンチと滑車で引っ張り出したりするようなスキルならいっぱい持っている。
どっちの人間と一緒にいたい?