合宿所の物干し竿では、キバラタイヨウチョウが左端で執念で営巣していた。
というのは半分冗談で、彼らはわざと人間がうじゃうじゃ通るような一番忙しい場所を狙って営巣し、外敵から守ってもらうというツバメと同じ思考の持ち主なので心配はいらない。むしろ望んでそこにいる。
ケープトリビュレーションで写真合宿が始まって数日、「なかなか出会わないな」と思っていたスター、ヒクイドリがついに登場。しかも小川を挟んでもう1羽との睨み合い・鳴きあいという素晴らしいシーンだった。
↑川向こうからこちらのヒクイドリの様子を伺う別のヒクイドリ。
それにしても、不自然な環境であるビーチにいるヒクイドリにすっかり世の中は甘えてしまって同じような写真ばかり見るけど、本来の原生林にいるヒクイドリ達の何と気高いことだろう。久しぶりに痺れる時間だった。これは本当に反省すべき点で、時間はかかっても不自然な海水浴場ではなく本来の生息環境でヒクイドリを見たいという世論を形成していくように私も努力しなければならない。初めてヒクイドリを見たのはキュランダの獣道の奥深くで音を立てて私の目の前へ斜面を駆け下ってきた奴だったけど、生涯忘れられないほど感動した。それを考えると現在の世の中は、人間の食べ物を目当てに海水浴場にやってくるヒクイドリを見ることに満足して堕落している。あそこで見ても誰も感動しない。
予定表にあるように、最終日は参加者達が印刷した自信作を審査員達が投票し、1−3位を選ぶというコンテストがあった。結果は3位にオーストラリアイシチドリ、1位に例の物干し竿のキバラタイヨウチョウが選ばれて、これはかなり??だった。少なくとも私にはとてもありふれた感じの、機材も力不足の「ただ鳥が写っている写真」であり連日どこの鳥関係SNSでも見かけるような、あるいはそれより下くらいな写真。私なら普通にハードディスクから削除するレベルだった。ただ2位になったオレンジマングローブの花をシャドウの中に写した写真は「おお、上手い!」と思ったので、鳥の写真に関してはそもそもハードルが特別に高くなってしまっているのかもしれない。
これは私が遊びで撮った同じキバラタイヨウチョウだけど、どう見てもこれ以下だったけど…。
まあいいじゃない、世界レベルの野鳥マニアと風景写真家とでは住んでいる世界は違い、実生活およびネット上でも両者に接触点はない。だからただバス運転手を演じ、正体を明かしたくなかったんだよね。