太田祐 おおた・ゆう Yu Otaオーストラリアにおいて唯一の日本人専門野鳥ガイド・野鳥研究家。オーストラリアの野鳥観察に関し日本における草分け的存在で、TV番組や書籍、各SNSなどを通じ最大の情報発信者である。オーストラリア産鳥類リストは外国生まれとしては驚異的な現在739種。株式会社ワイバード(日本唯一のバードウォッチング専門の旅行会社)講師。アジア人初の700Club(オーストラリア産鳥類リストが700種類以上ある人の名誉クラブ)に当時若干36歳で加入する。Birdlife AUSTRALIA(オーストラリア野鳥の会)が長年行なっているセスジムシクイ類調査の調査リーダーや運営委員を務めており、豪国内でも広く知られている。豪永住権やバスツアー事業認可、国立公園や自然保護区の営利使用認可、救急処置資格、衛星携帯電話、海外添乗員資格なども保有。国内有数の探鳥エリアであるアサートン高原にある4000坪の自宅兼民宿【ジョンストンベンドキャビン】で野鳥や動物を見つつ暮らしている。2020年に有名会計事務所から『ケアンズ随一のビジネス』と評される。ジョンウインター博士が2009年から行ってきたキタフクロムササビ調査を継承。QPWS(クィーンズランド州政府 野生動物・国立公園管理局)に職務番号および現役の従業員ID番号も保有。
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» コンサベーション » フクロムササビ調査2023 前編
昨年から私が責任者をしているフクロムササビ調査。今年度は調査地の国立公園が猛烈な山火事に飲み込まれ調査の3週間前から完全に閉鎖されている状況で、当局からは『予定通りやるというのならいいけど、多分ハゲ山よ』と言われつつ特別に許可を得て行ってみたら ←どう見ても嵐の前。山火事で燃え尽きているのではなかったのか?とりあえず夜の調査開始に備えてキャンプを設営する。去年までの調査ではレンジャーが不定期で滞在するための一軒家が利用できていたのだけど、今年から密猟や山火事対策という意味もありレンジャー1名が駐在するようになったので我々は弾き出され、レンジャー基地付近でキャンプをすることになっていた。 奥に見える青い小型テントが私の。このテントについては後で述べる。右に写っているのは一時滞在者用に設置されたキャラバンで、とりあえずここで料理や冷蔵庫が利用できる。記憶に残る悪天候に見舞われる今回、結果的に一番ありがたかったのはこの張り出した屋根かもしれないが。
ちゃんと水洗トイレもあるが盛り上がったのは
そこにぶら下がる!?というEastern Horseshoe Batだ。この後で誰かにどかされていた。
そのどかされたEastern Horseshoe Batはすぐ隣のシャワー室へ移動。なんてやつだ。このシャワーは水圧も温度もとても快適だった。調査が終わるのは毎晩深夜なので、メンバーは変わるがわる翌朝にシャワーに入っていた。嬉しいのは、今回のメンバーは爬虫類ファンが半数で彼らは朝が苦手な夜型なところだ。私も一番頭が冴えるのは21時から午前3時ごろにかけてという生粋の夜型の体質をしており、夜明けから活動を要求される熱帯地方の野鳥ガイドなんて思いつく限り最悪の相性の仕事だと思う。本来私は午前3時ごろまで仕事をして11時ごろまで寝ている、というのが最も体調がよく、同じタイプの人間に会うことがとても珍しい。 この僻地では携帯電話の電波など入るわけはなく私は衛星携帯電話を緊急連絡用に持っているけど、衛星wifiをレンジャーが解放してくれたのは天気予報やレーダーを見る上でめちゃくちゃありがたかった。毎回ログインが必要なのはご愛嬌だが。
私が最近使っているテントはランクルのルーフに備え付けるような重厚なルーフトップテントでもなく、登山部出身だけに先進のウルトラライトシェルターでもない。かつてはそれらを使っていたがもうやめた。今使っているのは量販店で三千円台で売っているOZ Trail製のタスマン2だ。
フツーに2−3人用テントでしょう?これが三千円台で帰るなら穴が開こうが汚れようが知ったこっちゃない。「でも重たくて嵩張るんでしょう?」というとわずか2.00kgジャスト。有名ブランドのロゴが付いていれば4万円しかねないところであり破格と言ってもいい。今回テント組は3組いたけど、全員がOZ Trail製のタスマンシリーズ(サイズは色々ある)を使っていたのは感心した。何十年も仕事兼趣味で野山で過ごした人は最終的に高級・先端アウトドアギアを使わなくなっていく傾向にある(むしろなんか恥ずかしい感さえある)。1000万円とかする車で来ていたでもだ。ちなみに残りの1組はハンモックだった。それはそれで凄い。 このフクロムササビ調査はこの後三日三晩雷を伴う大雨に見舞われ、地面は水溜りだらけになったがタスマン2は特に問題なかった。2kgの重量で2-3名が夜を明かせ、三千円台だというならお土産としていいと思う。オーストラリアの中規模以上の都市ならどこででも手に入るので。 下の方の黄色い空は夕焼け、上は嵐。さあ来るぞ。
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