太田祐 おおた・ゆう Yu Otaオーストラリア永住の野鳥ガイド・野鳥研究家。オーストラリアの野鳥観察に関し日本における草分け的存在で、TV番組や書籍、各SNS、機内誌などを通じ最大の情報発信者である。アジア人初の700Club(オーストラリア産鳥類リストが700種類以上ある人の名誉クラブ)に当時若干36歳で加入した。オーストラリア産鳥類リストは20台半ばでの移住者としては驚異的な現在740種。Birdlife AUSTRALIA(オーストラリア野鳥の会)が長年行なっているセスジムシクイ類調査の調査リーダーや運営委員を務めており、豪国内でも全国的な知名度を持っている。QPWS(クィーンズランド州政府 野生動物・国立公園管理局)に職務番号および現役の従業員ID番号も保有するほぼバイリンガル。オーストラリア永住権やバスツアー事業認可、国立公園や自然保護区の営利使用認可、救急処置資格、衛星携帯電話、海外添乗員資格(国交省)なども保有。オーストラリア有数の探鳥エリアであるアサートン高原にある4000坪の自宅兼民宿【ジョンストンベンドキャビン】及び【AAK ロッジ】で野鳥や動物を見つつ暮らしている。コロナ禍の混乱に乗じて開始した地方でのバス会社事業も急成長し、有名会計事務所から『ケアンズ随一のビジネス』と評された。
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» オーストラリア野生動物探訪旅行の記録 » アイアンレンジ旅行記 5-6日目 夜襲
我々以外誰もいないアイアンレンジ初の夜。これまで20名のツアーと二晩、大騒ぎ軍団と一晩過ごしたのでとっても今日は静か。キャンプはこうではなくてはならぬ。テントのすぐ裏にケープヨークメロミスが出てきた。一昨日ちらっと林縁で見かけたけどすぐひっこんでしまったし、この手の生き物は撮れなくて普通なのでラッキー。
フリーズしてくれたおかげでしっかり見られた。 あと、バンディクートにもここらへん固有種がいるはずだけどそれも見られるといいなぁ。彼らが掘った穴は結構見かけたけど。 今晩もクスクス発見。しかもキャンプエリアのど真ん中の樹。出目金みたいで模様もはっきりしない新顔。何日も前からここにいたのかも。人が多過ぎて、さすがにスポットライティングはここでは出来なかったから。 このまるまったしっぽを引っ張ってみたい。 さぁ、明日は予定ではアイアンレンジともお別れだ。あと4日くらいはいられるんだけどレイクフィールド国立公園に宿題が残っているし、この時期でも見られる固有種のおおむねは観察できたから。寝袋に潜り込む。 寝袋の下には、通称銀マットと呼ばれているマットのもう少しいい奴(カスケードデザインのリッジレストロングを真ん中で切り、二枚重ねて半身用)をいつもひいて寝てきたんだけど学生時代と比べて堕落してるのか年齢なのか、どうも地面の固さが気になる。昔みたいに荷物を全部背負って縦走するわけじゃないから、今度からエアマットにしようかな…。200gは重くなるけど…。1gでも軽く、1cm四方でもコンパクトなギアをというしみ込んだ思考はもうとれない。だから、キャンプに普通の家庭用テレビや掃除機、ホットプレート、時には電子レンジまでを持ってきたり、一個10kgくらいありそうなガスカートリッジを使うオージーの事は永遠に理解できないし、向こうも、ペグやコッヘルをチタン製のものにしたりトイレットペーパーの芯を抜いて潰して持ってきたり、軽量化のためナイフ/フォーク/ボールペンの柄の部分を何センチかカットしたりグローブは片方だけを持ってくる私の事も理解しないだろう。 時は流れ深夜。外から時折、 「くぁかー! いぇー! ぎゅるぎゅるぎゅる」 という凄い声が聞こえて目が覚める、まではいかないけど意識がちょっと戻る。 実は昨夜も鳴いていて話題になったんだけどオーストラリアツカツクリさんだろうか。最初の「くぁかー!」の部分はあってるんだけど、その先がだいぶ違うんだよね、ケアンズ周辺で鳴いてるそれと比べて。正体を確認したかったけど結局起き上がるまでは至らず。うとうとしていると、時々体がチクッとする。ばし!と叩いて見ると小さなアリだ。別に。自然の中でキャンプしている以上それくらい普通。 またチクッ。またまたチクッ。んー、なんか多いですね、と起き上がってヘッドランプを付けたらさすがに「ぎょえっ」と小さく叫んでしまった。テント内部、床一面とまでは言わないけどアリとサナギで埋め尽くされてた!マットレスを持ち上げてみると、裏面のぎざぎざにはびっしりアリ。しかも、ごまのような小さいアリと、家でも見る胴体が白っぽいやや小さいアリ、日本のクロヤマアリにそっくりなアリ、通称ピョン吉ことジャンピングアント、脚の長い赤いアリなどの多国籍軍にテントが占領されてしまった。外へ飛び出すと、テーブルや水タンクもピョン吉に占領され、脚の長いアリが果てしない行列を作って私のテントの下へ潜っていっている。裏手からはクロヤマアリが列をなしてふた方向から挟み撃ち。アリ連合軍による夜襲だ。 もちろん、テントには何の食べ物もないし、月齢とか天気とか、何らかのきっかけでアリの活動(引っ越し)が活発になり快適そうなテントの中にみんなで入ってきたのだろう。実は就寝前に大行列は確認してたけど我々のテントとは関係ない方向へ向かっていたから特にそれ以上気にしなかったのだ。そういえば、外に出しておいたスポットライトのバッテリーケースがなぜかアリだらけになっているという(しかも二人とも)前兆はあったのだ。 こりゃーちょっと大変だぞ、と徹底抗戦の覚悟を決める。まずはテントの周りに外堀を築いて水を張り、これ以上の増援部隊の到着を防ごうとしたけどここでは水は貴重品なので虫除けスプレーで代用。いるだろうな、と思って持ってきたけど出番がなかったのでちょうどいい。テントの外側にも無数のアリがくっついて色が変わってしまっているけどとりあえず外側は無視。どこからテント内部へ侵入したのか、と調べると床に小さな穴が沢山あいている。あれー、こんなの遠征前にチェックしたときはなかったけどなぁ。絶縁テープで塞ぐ。内部をうごめく何千と言うアリ連合軍はかわいそうだけどぞうきんがけをする要領で処分。 あと、役に立つか分からないけど近くにいた生物兵器を投入。 アカガエルの仲間Rana daemeliだろうか? ともかく頼んだぞ。 寝袋やマットレスを外へ引っ張りだして、はたくと「バサバサっ」と鳥の羽音みたいな音がした。すぐそれに反応してchiemomoさんが彼のテントの中でがばっと起きる音がした。かわいそうに。ある意味彼は病気ですね。スプレーの音とかには全然反応なかったのに。 夜襲を受けたのが深夜一時。あらかた撃退が終わったのが4時過ぎ。マイッタマイッタ。夜明けまで一眠りしようかと思ったけどそのままお茶にしたりして起きてた。オーストラリアツカツクリが歩いている。やはり夜に聞こえる、 「くぁかー! いぇー! ぎゅるぎゅるぎゅる」 の声は君だったの? あ、待て、まだ話は終わってないぞ。 朝日が昇るとchiemomoさんも起きてきた。キャンプ出発の日の習性で、ついつい撤収準備を始めてしまう二人。鳥見のゴールデンタイムなんだから後すればいいじゃないか、と気がつき近所の散歩へ。キタメグロヤブコマの声がずっとしてて、薮へ突入。暗い、狭い、無数の障害物、ちょろちょろ動き続ける相手。見るだけならある程度はだけど写真は撮れなかった。 ただ、幸運にも時期外れのクリハラヒメカッコウを押さえる事が出来、さらにクスクスも日中にもかかわらず発見しクスクス発見記録を5日連続、100%を維持したままアイアンレンジを去る事となった。
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