治安もよく、日本からのアクセスも簡単で費用も安く、ケアンズ並みの自然や生き物を身近に(特別な準備や出費を伴わず)感じられる場所はそうないと思います。
オーストラリア大陸は、安定したプレート上にある事から大陸移動やそれに伴う気候変動、他の陸地との接触による外来種の流入が起きておらず、他の大陸では遥か昔に滅んだような古いタイプの哺乳類や、熱帯雨林が保存され大変興味深い生態系を形成しています。
ケアンズ周辺はそんなオーストラリアの自然を凝縮したような所。オーストラリア総面積からすれば0.01%を占めているに過ぎない”クィーンズランドの湿潤熱帯地域(後述)”だけで大陸全体の哺乳類種の約三分の一、鳥類の約二分の一を確認できます。野鳥に関しては、日本で週末を使ってバードウォッチングを普通に始めた人が4〜5年かかって確認すると言われる200種類を、ケアンズで頑張れば数日で記録できます。毎年シーズンにはアメリカやヨーロッパ、そして日本からも数多くの野鳥の会がバードウォッチングに訪れます。
1981年に世界遺産となったグレートバリアリーフは、小さな珊瑚が数万年をかけて巨大化し長さが2000kmにも及ぶ地球最大の生命体となったものです。ちなみに、珊瑚は植物ではなくクラゲに近い仲間の動物です。グレートバリアリーフは8000種の生物に住処を提供し、二酸化炭素を吸収し酸素を供給します。暖かい海は自然蒸発で大量の水分を空中に返します。それらは雲となり、海岸線から陸地側へわずか3km程度にそびえるバートルフレアー山やベレンデンカー山などの1600m級の山々にひっかかるようにして再び雨となり降り注ぎ熱帯雨林を育んでいます。
それらの雨が形成するのが1988年に世界遺産に指定された熱帯雨林、前述の”クィーンズランドの湿潤熱帯地域”です。少なくとも15万種類の植物が確認され、一億三千万年前の状態を基本的にとどめていると言われます。その歴史はアマゾンよりもはるかに古く、中には他の大陸で珍しい化石として展示されている植物が自生しています。
ケアンズは、そういった海と森の二つの世界自然遺産に囲まれた街です。二つはかなり接近して東西からケアンズの街を挟んでおりケアンズ北部(ディンツリーやケープトリビュレーション付近)ではほぼ接触しています。大分水嶺山脈を超えると気候は一転し、赤土と灌木が広がる乾燥帯へ変化します。複雑な地形と過去の火山活動、海風がもたらす自然は多くの環境を作りケアンズ周辺の自然の多様性の源となっています。
治安もよく、日本からのアクセスも簡単で費用も安く、これだけの生物多様性を身近に(特別な準備や装備を伴わず)感じられる場所はそうないと思います。普通はアクセスが困難とか、治安や政情不安定とか、英語も通じない、予防接種は、とかそんな地域が多いはずです。
私はこの自然の楽園に住んでいる事を誇りに思っています。趣味でもあり、仕事でもあり、生き甲斐でもあります。ケアンズ住んでいる人でも、この自然の意味を理解していない人が多いのが残念です。インターネットでも、お土産や観光ツアーの情報ばかり溢れていますが、ケアンズ最大の魅力とは自然環境です。旅行でケアンズに宿泊される方、限られた時間だからこそショッピングや名所巡り、遊園は別の国でしたらいいのではないかとまで思います。
よいお時間をケアンズでお過ごしください。
willie(管理人)2007 APR
※ここで言うケアンズ周辺、とは北はクックタウンから南はミッションビーチまで。ケアンズから車での日帰り圏を指しています。