写真にはいくつか興味深いものが写っている。何人かの足元に巻かれているのは日本ではスパッツと呼ばれて雪や小石が靴の中に入るのを防ぐアイテムだが、ここではスピニフェックスという剣山の巨大になったような植物から足首からふくらはぎにかけてを守るためのものである。ちなみにオーストラリアではスパッツとは呼ばず、ゲイターと呼ばれる。
もう一つ興味深いのはLPガスのボンベかな。オーストラリア歴が短いうちは「こんなクソ重いものをキャンプに使うなんて馬鹿げている」と散々バカにしていたが、LPガスボンベは全国の僻地でもガソリンスタンドさえあればだいたい手に入り(使い終わったボンベと新品を手数料払って交換するシステム)、かつ一つあれば何週間も保つという点で合理的に思えるようになった。日本のように、週末を過ごすだけのキャンプとは長さも、補給の容易さも、ゴミ出しの容易さも全然違うのである。あの掌サイズのガス缶なんて大きな街でしか売ってないし、4週間僻地でキャンプし続けるには一体いくつガス缶必要で、その大量のゴミをどこで捨てるというんだ。
昨年のセスジムシクイ調査では難しい地域に配属されたこともあるけどセスジムシクイが全然見つからず、最後の方でようやく見せてもらったという情けない結果に終わっていたがそれは最初だからということでルールを守りすぎていたところもあった。周りの調査員たちはルールをあまり守らずある程度自由にアレンジして行動していた。そういうことなら今年はプロのガイドとしてもフリースタイルでセスジムシクイを見つけようじゃないか。
山岳地帯ではパープルイワワラビーを発見。そして初日にしていきなりカルカドンセスジムシクイを発見!素晴らしいスタートを切った。ただ調査中はセスジムシクイみたいなすばしっこい相手の写真を撮ってる余裕はないけどね。片手には書類、片手にはペンを持ってるし。
ケナガワラルー「こんなところにニンゲンが!」
内陸部ではセキセイインコはどこにでもいるといえばいるし、何処にもいないとも言える。全てはその時の雨の量次第である。
調査開始から4−5泊目。この頃にはすでにカルカドンセスジムシクイを一回、ムナジロセスジムシクイを二回見つけており去年の苦戦が嘘のように順調。昨年の2週間は必要な修行だったのだ。特にムナジロセスジムシクイはオーストラリアの難しい野鳥の5−6番手に挙げられることも少なくない強敵なのだから。
この辺りの準固有種であるマルオセッカ。たくさんいた。
ショウキバトもねぇ。警戒心薄い鳥だからいるところではメチャクチャ簡単なんだよね。
躍動する野生エミュー一家。かっこいい。
アカヒメクマタカ。
セアカオーストラリアムシクイのメスたち。
明日は昨年同様にヘリコプターで山間部に輸送され、そこでセスジムシクイを探して数時間後にまたヘリで回収されるというスケジュール。空港を飛び立って街上空や観光地上空を飛んで空港に帰ってくるようなヘリと一緒にしてはいけない。何日もかけて大型4WDでないと辿り着けさえしないところの原っぱに集合してそこから強引に離陸して、全くの原生の山地に無理やり着陸、数時間後にそこからまた回収されるこの特別感と眺めは、その辺の空撮や遊覧飛行とは全く次元が違う。