ギリスハイウェイを登り高原に出た頃には日が沈みかけていた。今晩泊まらせてもらう山の所有者である古い知人に挨拶をし、軽く夕食をごちそうになった。日が沈むと標高800mの高原は急に冷え込み、半袖の上にキルトのジャンパーを着込む。星空を期待していたのだけど、今晩は厳しいかもしれない。一旦私有地を離れ、地元の人向けに行なわれているアランさんの夜行性動物探検ツアーに参加する。どの辺が地元向けかというと、まず現地集合。餌付け、餌台など全くなし。それから、参加者個人の車でツアーの移動をしなければ行けない所。
その後は、個人的にカーテンフィグツリーへ移動する。雨が降り始めた。恐らく私以外誰一人いない夜の国立公園の森の奥へ入って行くときは少し自然に対する畏怖を感じた。おなじみのフクロギツネが何匹か。ふいに、頭に何か固い実のようなものがあたった。痛いなぁ、と見上げると、オオハダカオネズミがいた。食べ物の実を誤って落としてしまったのか、わざとぶつけたのか。
私有地内に戻り、そろそろ深夜になる熱帯雨林の中を歩いていると持っていた40万ルクスのスポットライトが突然ふっと消えた。風が森に大きく音を立てる。おかしいな。急に消えるなんて、と思いヘッドランプをつけると目の前に大きなキバタンの死骸があった。ぎゃー!!でもないか。さすがに写真は撮らなかった。
とても穏やかな気分のまま、車に入り寝袋をかぶって眠りにつく。遠くでチャイニーズダックが叫ぶ声が聞こえる。あれは、何か危険を感じているときの声。何か出たんだろうか?ディンゴ?この場所で過去一度死骸を見た事がある。でも、もう寝袋に入ってしまうと面倒だ。そのまますぐ眠りに落ちていった。(中編に続く)