Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

バリン湖とイーチャム湖、キャンプ(前編)〜オーストラリアの全ての野生動物を求めて

たき火午後にはアサートン高原に向けて出発しているはずだったが、あれやこれやをしていて夕方の五時になってしまった。簡単なキャンプの用意を四駆に積み込む。テントは、登山用の超軽量なものを高校生のときから使っているけど今回は無しで。四駆の後部座席をたためば1.77mの真っ平らなスペースが出来るから、そこにマットと寝袋を引けば十分だ。一人だし。


ギリスハイウェイを登り高原に出た頃には日が沈みかけていた。今晩泊まらせてもらう山の所有者である古い知人に挨拶をし、軽く夕食をごちそうになった。日が沈むと標高800mの高原は急に冷え込み、半袖の上にキルトのジャンパーを着込む。星空を期待していたのだけど、今晩は厳しいかもしれない。一旦私有地を離れ、地元の人向けに行なわれているアランさんの夜行性動物探検ツアーに参加する。どの辺が地元向けかというと、まず現地集合。餌付け、餌台など全くなし。それから、参加者個人の車でツアーの移動をしなければ行けない所。
集合場所から、全員の車が連なって森へ向かう。歩き始める前にみられるかもしれない動物の写真や、スポットライト、双眼鏡などの準備をする。その日に集まったのは私を入れて5人。みんなそれ系の雰囲気十分で嬉しくなる。(マイ双眼鏡、マイ長靴、一眼レフとか)

この日の主な結果は、フクロギツネ数匹と珍しいキノボリカンガルーの親子。また、木の上で寝ぼけているカワセミ(モリショウビン)が3羽一緒にみられた。



 その後は、個人的にカーテンフィグツリーへ移動する。雨が降り始めた。恐らく私以外誰一人いない夜の国立公園の森の奥へ入って行くときは少し自然に対する畏怖を感じた。おなじみのフクロギツネが何匹か。ふいに、頭に何か固い実のようなものがあたった。痛いなぁ、と見上げると、オオハダカオネズミがいた。食べ物の実を誤って落としてしまったのか、わざとぶつけたのか。
 私有地内に戻り、そろそろ深夜になる熱帯雨林の中を歩いていると持っていた40万ルクスのスポットライトが突然ふっと消えた。風が森に大きく音を立てる。おかしいな。急に消えるなんて、と思いヘッドランプをつけると目の前に大きなキバタンの死骸があった。ぎゃー!!でもないか。さすがに写真は撮らなかった。
動物もいないのでそろそろ切り上げようってことで車まで戻り、たき火をして熱いコーヒーを飲む。お腹もすいて来たのでカップラーメンを食べる。ふふふ。楽しいな。雨さえなければもっといいんだけどな。たき火が撥ねる音と、川の音。風の声。熱帯雨林に降り注ぐ少し冷たい雨。全てに覆いかぶさる夜の闇。人間の存在なんてこの自然の中ではどこまでもちっぽけなもんだ。
 とても穏やかな気分のまま、車に入り寝袋をかぶって眠りにつく。遠くでチャイニーズダックが叫ぶ声が聞こえる。あれは、何か危険を感じているときの声。何か出たんだろうか?ディンゴ?この場所で過去一度死骸を見た事がある。でも、もう寝袋に入ってしまうと面倒だ。そのまますぐ眠りに落ちていった。(中編に続く)

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