地図を眺めていたらどうしても静かな自然の中へ行きたくなり、一泊二日キャンプでアーバインバンクへ出かけてきた。アーバインバンクはケアンズから道路距離でおおざっぱに150kmほど西側の山中にある辺境の谷間の集落で、1880年頃から1920年頃にかけてジョン・モファットというスコットランドからの移民が鉱山開発で大成功し、一大帝国を築き上げたその本拠地である。
この写真は彼の実際の執務室であり、奥の写真がジョン・モファット。古い木の家、アンティークが好きな私には悶絶する空間である。
その前にアーバインバンクが辺境であることを伝えておく。知らないという事は怖いことで、過去には旅行会社ケアンズ支店の一行がコンパクトカーに乗ってあのバトルキャンプロードに突っ込んでいってスタックし、通りすがりの車に救助されたとも聞いた。日本人は、道路という物は舗装されており、川という物には橋が架かっており、携帯電話という物はどこでも使えるといった誤解をしている事が多い。もしそうなら、一台750万円するランドクルーザーがこんなにウジャウジャとオーストラリアを走っているわけがない。
振動で車のネジがゆるんでバラバラになる図を想像しつつ、アーバインバンクに着いた。まずは村の資料館でガラクタを鑑賞するぞ。この建物こそ一階がジョン・モファットのオフィス、二階が彼の住居だった物で現存するクィーンズランド州最古の一戸建てと言われている。1800年代のお宝がゴロゴロ展示してあるに違いない!
うぉー凄い!!
ジョン・モファットのデスク。ひぇー!
ジョン・モファットの封印。きゃー!
封印と言えば映画「ビューティフル・マインド」でラッセルクロウが蝋燭で機密文書に封印をしているシーンを思い出さないか?
ジョン・モファットのネコ!
ではありません。古い建物にはネコがつきものだな。
私が1800年代から1900年前半くらいの古いオーストラリアのガラクタや建物を愛するのは、この乾きまくって痩せた厳しい大地を住処として逞しく一生を全うした人間達の臭いや開拓自体の雰囲気が感じられるからであって、それ以上に古い物、たとえばアボリジニの遺跡とかには没入感が得られずあまり興味が及ばない。
テーマパークにあるようなレプリカではなく、アーバインバンクのそれは本物である。この辺のレトロ感で、私は気を失ったに違いない。
人間はどんな傾斜地でも諦めずに家を建てるものである。
アーバインバンクの集落にある建物の大半が文化財指定を受けているが、そのほとんどに普通に人が住んでいる。いきなり入っていくとトラブルになると思う。
これは暑いオーストラリア北部においては珍しいレンガ製の建物で銀行だったという。これも今は賃貸されていて誰かが住んでいるとは聞いていたが、よく写真を見てみると「ザ・オールドコーヒーバー&ラウンジ」という看板が出ている。しまった、行きそびれた。
(後編に続く)