Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

オーストラリアの野鳥図鑑 一覧レビュー(2020年更新)

このページでは数あるオーストラリアの野鳥図鑑などのなかから、
 ①オーストラリアを主な対象にした本であり、
 ②私が実際に所有していて、
 ③且つAmazonなどにより日本からも入手が可能そうなもの、
の条件を満たす物を抜粋した。


【通称 ”A B G”】2017年に発行された現状最新鋭の総合オーストラリア野鳥図鑑。この、どうしようもない大きささえ耐えられるのならもちろん最高の一冊になる。長所として、これまでの各図鑑が採用していたオーストラリア標準の分類を離れてIOC分類に基本的に準拠した点、亜種と季節移動もカラーで描き分けられている点、識別点の豊富な指摘。1ページ目のイラストインデックスも使いやすい。欠点として体長が記載されず、代わりにクチバシの長さと羽の長さが記載されている点。一般のユーザーはクチバシや羽の長さを正確に知る必要はなく、普通に体長を比較したいのだが。それからかなり珍鳥やこれから期待される珍鳥にもページが取られており、それによってさらに大きく重くなっており、そのせいか背表紙などはすぐ千切れてしまう。ただ全体として最新で優れた図鑑であり、かつ妙に低価格なこともありこの大きさを携帯できるなら他のものは全く必要ないと思う。家で使ったり、スーツケースに携帯して夜宿で見直したりして使う。


【通称 ”昔のスレーター”】オーストラリアのバードウォッチャーは恐らく全員一冊は持っている、というイメージの変則的な縦長サイズのフィールドガイド。イラストはあまり頂けない。細かい識別には難があり実際の色と随分異なるものもある。猛禽の飛翔形ページが白黒なのも大きくマイナス。製本自体もあまりしっかりした作りではなく、すぐバラバラになってくる。野鳥ガイドなどをしていると毎年買い換えないといけない程に痛み、これが一番不満。しかし圧倒的な普及率は鳥合わせの際等何かと便利だろうと思うし限られたスペースにしては結構情報が詰められている。他の競合するフィールドガイドが大きすぎる事もあり、携帯サイズを望むならこのスレーターしかない。(旧版)


↑のスレーターに改訂増補版が登場。【通称 ”新しいスレーター”】普通の人が訪れる事が困難なオーストラリアの超離島の鳥や迷鳥が追加され掲載種とページ数は大幅に増えた。これは一長一短あるけど、唯一のハンディサイズのフィールドガイドとしては重く分厚くなった点で惜しい。まぁスレーター1冊で済ましてしまおうという場合は守備力が上がったのでよいかもしれない。分布図も最新のものに上書きされた他、ページがめくり易くなった事、どうしようもなかった海鳥のページが改善された点も評価できる。飛翔図が白黒という旧版の大きなマイナスはカモメ、ウズラ、ミズナギドリなどがカラーに対応し改善。しかし一番対応すべきな猛禽は依然として断固モノクロをキープ。これはもう信念的なものを感じる。結構な数で挿入されている水彩画のような鳥アートはあまり巧くもなく、はっきりいって不要。旧版課題の耐久性(製本の質)は向上している。この図鑑だけに掲載されていた謎の鳥サビオセンニョムシクイは今回の改訂版では消え去っている。私はスレーター図鑑はリュックに入れて携帯する用途で使っている。

【通称 シンプソン図鑑】
分布図や亜種の記載が大変充実し、背景にその鳥の生息環境を描いた独特の構成でオーストラリアを代表する野鳥イラスト図鑑。メリットでもデメリットもでもあるのがその背景で、同じページに掲載される野鳥に遠近感が生じたり、同じページに何カ所にも描かれる種類があったり。見開き左側は通常の文章による解説だけど、左側では一番上に解説がある種類が見開き右側では一番下に描いてあったりで直感的には分かりにくい。見開き右側のページは20以上のイラストがぎゅうぎゅう詰めになっているうえに仕切り線も無いので大混雑しているページも少なくない。持ち出すのは辛いサイズであり、また無秩序にイラストを詰め込んだ構成は現場で急いで使うには適さないので家で使おう。亜種に関することや季節移動に関する事においてはきっちりと記載された唯一のフィールドガイドとなる。ハードカバーとソフトカバーの二種類が出ている。最新は第8版。
上のシンプソン図鑑は分布図や亜種の記載が非常に優れている反面、類を見ない程フィールドでは見にくく使いにくいのでスレーター1冊だけでは心細い場合はこちらの「グラーム」がいいかもしれない。シンプソンよりも更に大きく、すでにフィールドガイドとは全く呼べないサイズながらその大きな1ページをわずか2ー3種で使用する贅沢な構成。イラストも広々と大きく見易く、飛翔形も多く描かれ、丈夫な造り。猛禽飛翔一覧はオーストラリア4大フィールドガイドの中で唯一実用に堪えうると思っている。(旧版)
上で紹介した「グラーム図鑑」の改定第9版。変更点は少ないが、今から買うならこちら。


通称マッコンビー。「オーストラリア4大野鳥フィールドガイド」の中でもっともマイナーな一冊。季節移動や聞きなし、亜種など情報量は多く、所有しておいても損は無いけどイラストの色彩が全体的に華美すぎ現実離れしている(そのせいか、この本はよくバードウォッチャーではない人の家にあったりする)この本だけで識別を行なうのは避けたい。スレーターに対抗すべくハンディ版も出ているけど色彩のおかしさは相変わらず。スレーターも決して手放しで褒められるものではないだけに、いずれ巻き返して欲しい。
ーーーーーーーーーー以下はフィールドガイドではなく鳥関係本ーーーーーーーーーー
オーストラリアの野鳥の名前の由来がわかる一冊。Galah(モモイロインコ)って何、Major Mitchell’s Cockatoo(クルマサカオウム)って何がメジャーなの、Gang Gan Cockatoo(アカサカオウム)ってなぜガンガンなの、に答えられる本。

オーストラリアのフクロウ、ヨタカ、ガマグチヨタカに限定し、開くと驚愕の画像がつぎつぎ登場する。写真の質はそうとう高い。それぞれの種類の生態や研究のドキュメントが写真とともに綴られていている。そもそもそういった夜行性の鳥達の営巣や育児を見る機会は一般には非常に少なく、調査/撮影方法も馴染みの無いものも多い。そのことが本書を面白くしている。
写真図鑑。640ページの大型本で、古い本だけど今でも鳥関係者の多くが蔵書している。写真図鑑や写真フィールドガイドは最近ぱらぱらと出てきてはいるのだけど使えないものが多く、今の所コレに限る。テキストが豊富だし、フィールドガイド系のそれは識別や外見に重点を置いているのに対し、こちらは生態や食べ物、繁殖に多くの文字を割いており読み物としても面白い。分布図がかなり古いのでそれだけは気をつけたい。営巣の写真の多用が時代を感じさせる。
世界中のオウムやインコに限定したフィールドガイド。彼らは鳥類の中でも特別な人気と知名度を持ち、世間の関心は高い。このフィールドガイドの記述内容は簡潔ながら、飼い鳥や動物園の鳥、雑誌で見た鳥の名前や詳細を調べるのに重宝している。亜種ごとに分布図を色分けしている辺り、他のフィールドガイドでも是非取り入れて欲しい工夫。イラストがおなじみのフランクナイトによるものということもあり違和感が少ない。インコ好きなら是非一冊本棚へ。オーストラリアで買うよりも安い。
野鳥ファンではないけども愛鳥としてのインコやオウムのファンだ、という人は多い。オーストラリアは中南米、東南アジアとならぶインコやオウムの大原産地。オーストラリアのインコやオウムだけ載っていればいいわ、という方々にはこの一冊。手帳くらいのサイズなので贈り物にも。ただ隅々まで読むと細かいところまで生態や分布の変遷、繁殖などに踏み込んでいろいろとコラムが挿入されており、単なるミニ写真図鑑ではなくまめ知識集として面白い。
オーストラリアの猛禽類の各種についての解説と写真、イラスト。飛翔図は性別年齢別に一種につき多数描かれ、1ページ一種のレイアウトでない為に何が何やらかなり見辛いが、普通のフィールドガイドでは省かれてしまうような翼上面の比較や雌雄比較もあり資料的価値は高い。普通のバードウォッチングではここまでは必要ない場合も多いが、かなり深く鳥を見る場合は廃盤にならないうちに持っておくといいと思う。
改訂版がついに登場。類似種との識別において、左半身と右半身を描き分ける手法を採用。普通のフィールドガイドがカバーし切れていない細部まで比較が可能。これも職業的に鳥を見る人には必携。
オーストラリア野鳥の会による歴史的大作資料。オーストラリア全土を格子状に分割し、各地点ごとに各野鳥種類ごとに分布濃度を大きさの異なるドットで表示。されにそれを春/夏/秋/冬/繁殖/総計/と6つの季節ごとにも表示。1種1ページ、828ページ。他に類似文献の無い大作だったがオーストラリア野鳥の会が後になって自らこれのリアルタイム更新オンライン版的なものを公開した為に本の資料価値、もとい市場価値は暴落した。本として持っておきたい人は叩き売られている今が逆にチャンスかもしれない。
ケープヨークの総合自然紹介。表紙の写真はあまりにも有名。
オーストラリア最大の猛禽類、オナガイヌワシの基本書。昔お世話になりました。
オーストラリアのアイコン、ワライカワセミの基本書。昔お世話になりました。このシリーズは全部読むといい。
オーストラリアの絶滅危惧種の現状を様々なデータとともに紹介。この本を取り出す機会は意外と多い。それだけ絶滅危惧種は注目されており撮影を希望する人や会社が多い。
いわゆるビッグイヤー、一年間を野鳥を何種類見られるか競争に捧げたオーストラリア男の話。700種類強という記録は最近あっさりと抜き去られたが、今では彼はオーストラリア野鳥の会編集長を務める。
オーストラリアにおける日本産鳥類目録的な存在となっている一冊、とだけ書けばどう必要か分かる人は分かる。通称「Christidis & Boles」。
ミズナギドリ、アホウドリ、ウミツバメなど海鳥専門フィールドガイド。別にオーストラリアに限った本ではないが、南緯40度前後の海鳥黄金海域に属するオーストラリアやニュージーランドで最も役に立つ本。
シギやチドリのフィールドガイドと彼らの生態や保全の概略書も兼ねる。読み物としてかなりお世話になった。


鳥以外の動物に関してのフィールドガイドなどは別のページで、植物に関する本についてもこちらで紹介中。

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