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本当は三年も早かったシラボシリュウキュウガモの進出!

(3月15日配信のメールマガジンの内容を追加して転載します)
シラボシリュウキュウガモはトレス海峡を挟んだ隣国パプアニューギニアで見られるカモですが1990年頃からオーストラリア最北部の僻地ヨーク半島で散発的に記録されるようになっていました。これは人為的な移入ではなく、自然な分布域拡大と考えられ図鑑にも記載されるようになります。しかしヨーク半島は広大な未開エリアで先住民の影響も強く、本格的4WDと地元ガイドによるツアーなど以外ではアクセスし難い秘境の為に多くのオーストラリア野鳥ファンにとってもシラボシリュウキュウガモはまだ見ぬ鳥だったのです。また、シラボシリュウキュウガモが姿を時折見せていたエリアはヨーク半島の主な探鳥エリアからも外れていた事も理由の1つです。


そんな幻の鳥がケアンズ郊外の空き家の庭の池に13羽という数で突如姿を見せ、大騒ぎがおきたのが2011年9月末の頃です。2011年9月末が、一般人にはアクセスが困難なオーストラリア最北部ヨーク半島以外でのシラボシリュウキュウガモ初記録とされてきました。


ところがこれを約三年も早める事実を発見する事ができたのでご報告します。事の始まりは観光客向けのパンフレットでした。バードウォッチング産業が盛んなケアンズでは、観光パンフレットや機内誌にも野鳥を紹介するコーナーが設けられていたりする事がよくあります。先月、本棚を片付けていてそんな古い観光パンフレットを見つけてページをめくっていたらキャプションにはオオリュウキュウガモと書かれている、しかし正しくはシラボシリュウキュウガモ4羽が写った写真が目に飛び込んできました↓

本当は三年も早かったシラボシリュウキュウガモの進出


驚いて発行年を調べると2009年7月となっているではありませんか。ということは2011年9月末とされてきた初記録よりも少なくとも二年以上前からシラボシリュウキュウガモは最低でも4羽ケアンズ周辺にいて、誰も気がついていなかったことになります。



問題はこの写真がヨーク半島で撮影された物ではないかどうかの確認と、その撮影者および撮影日です。この追跡調査は友人Brianのおかげで完了しました。撮影者はケアンズの野鳥ガイドであるIan、撮影場所はヨーク半島ではなくケアンズ郊外のディンツリー、そして撮影日は2008年11月19日でした。そしてトリミングされていない元画像には5羽のシラボシリュウキュウガモが写っていました。関係者の電話の声は皆高揚していました。公式初記録を約3年前倒しする発見です。なんと2008年から既にシラボシリュウキュウガモはケアンズにいたのです。空き家の庭の池に13羽で現れた2011年9月末のこれまでの初記録時に隣の土地に暮らしている人が「2年くらい前からいたような気がするけど?」という証言とも合致します。

←その観光パンフレットの表紙。


この発見は念頭にない野鳥がいかに見逃されているかを如実に示しています。2011年9月末の旧初記録以降ケアンズ周辺の野鳥ファンの間でシラボシリュウキュウガモが脳内にインストールされ、それ以降は正しく処理されているはずですが、その前になるとシラボシリュウキュウガモはよく似たオオリュウキュウガモなどに脳内で変換されてしまい見逃されてきたのです。観光パンフレットが発行されて4年半、多くに人の手に渡りながら誰も間違いに気がついてこなかったのです。


今回の再発見では私が喝采を浴びましたが、そんな私も事の発端になった観光パンフレットを何年か前に入手した際はシラボシリュウキュウガモに気がつかずそのまま本棚に収納しているわけです。そう考えると、2011年9月末の旧初記録の発見者Johnの功績があってこそのもとであるといえます。

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