Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

セスジムシクイ類調査2019 その1

フリンダーズハイウェイ今年もセスジムシクイ類調査の時期がやってきた。15年近く続くこの調査はオーストラリア野鳥の会クィーンズランド北支部によるもので、年によって違うが基本的には2週間から4週間(!)原野でキャンプをしながら、スキルが要求される相手であるセスジムシクイ類を探していくものだ。今年で四年連続の参加で私は毎回およそ2週間の参加。私は現役世代なので流石に4週間もボランティアをしていられない。

1年目は散々な成績だったが2年目に覚醒し、3年目からは調査リーダーの任に就いている。今ではそれで収入を得ているのだろうと時々誤解されるがこれは全くボランテイアだ。ただある程度戦力とみなされるとガソリン代の支給はある。

現場はクィーンズランド州の西の果ての街であるマウントアイザ周辺。ケアンズからは二日間、1100kmの道のりだが夜間の走行をしなくても1日半で着ける。


700kmくらい?行ったところには良い池があり、ケアンズやタウンズビルから出発した人は多くがここでキャンプするのが伝統になっている。今回もメンバーの一人に偶然遭遇した。野鳥は多く、オーストラリアヨシキリやこのミミジロコバシミツスイ、

野生のセキセイインコとオカメインコ、モモイロインコ…

サザナミオオハシガモ、クロムネトビ、オーストラリアチゴハヤブサなどなど。
セスジムシクイ類調査は私が知る限り最も長期間無補給を強いられるものでありエキスパート向け。何しろ2週間、水も含めて一切の補給も電力も食料も手に入らないので全てを積んで、かつそれらが痛まないように維持する必要がある。今年は二人分で235リットルの水を積んでいった、という事だけでもその大変さがわかる。

冷蔵庫(冷凍庫)、セカンドバッテリーと走行充電システム、大型ソーラパネルなどは必須でスペアタイヤも2つ持つことが参加義務。オーストラリアでは壊れてもパンクしても周りには何もなく、国土の9割で携帯電話はつながらず、なんでも自分で対処するのが社会の基本になっている。

それが出来ない人やしたくない人は街から出てはいけない。ここは世界で最も人間が暮らしていない地域の一つ、北オーストラリアだ。

さっきセキセイインコと書いたが、たった半年前に空前の規模である15万羽のセキセイインコの大群を撮影した地域も通りがかったが大群は影も形もなかった。

私が「セキセイインコ健康ランド」と名付けたこのモーテルにもセキセイインコは全くおらず、全員チェックアウト済みのようだった。セキセイインコの大群を追うのは本当に難しい。大群が見つかったらすぐ駆けつける(10日以内)。それ以外に方法はない。


私の代表作の一つである映像。2019年1月撮影。
マウントアイザ郊外のベースキャンプに集合した2019年版セスジムシクイ類調査員達。新人が半分、経験者が半分、というのは大体毎年決まった割合だ。ベースキャンプの時点でもはやトイレも水もない。ここから14日間か…

なおこの調査が始まる前、オーストラリアのバードウォッチング界に激震が走っていた。オーストラリアの野鳥の中でも特に見つけるのが難しいことで知られるムナジロセスジムシクイは、私有地などを除けば実質“マクナマラ道路”沿いだけで観察されてきた。私が2009年に初めてムナジロセスジムシクイを見たのもそのマクナマラ道路だったが、それが公道ではなくなり奥にある鉱山が所有する私道へと変わってしまった(=関係者以外立ち入り禁止になった)。つまりただでさえ難しいムナジロセスジムシクイの唯一と言っていい一般人がアクセスできるポイントがオーストラリアから消滅したことを意味している。今から見ようという人にはこれは大変なことになってしまったし、このセスジムシクイ類調査への注目度もかつてないものがあった。

調査隊は3つに分かれる。その中の1つである太田隊は初日を全員のトレーニングに費やし北上、以前から知っているわずかな平坦なポイントでキャンプとした。この2週間、キャンプ場など一つもない。全て険しい原野なので過去の野営地情報をたくさん持っているだけでかなりのアドバンテージがある。車にかぶさっているのは120Wのソーラーパネル、いやソーラーブランケット。

翌日。早速調査開始!と思ったが、調査地点の1.49km手前のゲートがロックされており、この先は別の私有地となるらしい。こういうことはよく起こる。とても走行できないような道に送り込まれたりだとか。連絡を取り合うため強力な無線機や衛星携帯電話も各班が携帯している。


好奇心の強いアカハラモズヒタキは突如現れたニンゲンを観察に寄ってくる。

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