Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

セスジムシクイ調査ボランティア2週間 2017年版その7伝説バーズビルトラック

バーズビルトラック

いよいよバーズビルトラックに突入した。この道はマッドマックスのようなトラックか、マミジロセスジムシクイやクロオビトビを探す変態バードウォッチャー以外はまず通行する人もいないというオーストラリアの中でも上位のスーパー僻地であって間違えても個人でレンタカーで行こうとか考えさえしないほうがいい。屈強なオーストラリア人でもツアーで行くから。

なお世の中には1日あたり保険込みで2.5万円とか出せばランドクルーザーなどのレンタカーもあるが、それらでさえ未舗装の主要道を走ることは認めていても脇に入って行ったりわけわかんない原野に入ることは規約で禁じてるよ。よく読んでごらん。例えばケアンズからオーストラリア最北端のヨーク半島へ主要道だけを走ってレンタル・ランドクルーザーで行くことはできるが、レイクフィールド国立公園だのアイアンレンジ国立公園などの脇道にそれることは認めていない。理由ははあなたがレンタカーの経営者だったら?と考えるとわかる。

さぁこれからバーズビルトラックで二泊三日の予定で挑戦が始まる。ここまでくればどこで野宿をしたって取り締まる人さえいない!清々するなあ!まずマミジロセスジムシクイを探す場所として事前に目をつけていた場所で車を降りた。ふぅ。


…!?

…。

ってもしかして!?


おぉ〜!!!いきなりクロオビトビじゃん!!一種増えた!



とまっているときは普通種のオーストラリアカタグロトビに激似。


しかし、クロオビトビは翼下面にながーい黒帯が走る。カタグロトビの兄弟みたいなものだがその珍しさは次元が違い、多くのバーダーにとって「オーストラリアで未見で残っている最後の猛禽類」がこのカタグロトビである。


もう大陸最後の猛禽…。私はあと40年くらい何をして生きていけば?


簡単に表現すれば、砂漠を飛んでいるカタグロトビがクロオビトビだ。クロオビトビを探してバーズビルトラックなどの砂漠を彷徨っているバーダー達のストーリーは、野鳥の会会報などで時々読んだり人づてに聞いたりしていた。


さて、もともとマミジロセスジムシクイをここで探す予定だったのだ、と歩き始めるとなんだかそれっぽいものが茂みをちょろちょろ逃げて行った。ちょうど雨が降ってきたこともあり、場を休める意味でもしばらく車に入ってお昼ご飯とする。


急速に天候悪化。

なんか世界の終わりみたいな場所になってきた。本気でこの砂漠周囲100-200km四方に存在する人類は私ただ一人な気がするぞ。それに震え上がるのがアジア人であり、ウットリするのが欧米人(特にイギリス人、ドイツ人、オーストラリア人、アメリカ人)に多い。


雨が止まないので車内でパソコンをいじっていたら、何かが助手席側の茂みから出てきた。これも珍しい野鳥であるニッケイウズラチメドリだ!前にアリススプリングスでガイドを頼んで見せてもらった際(しかも100mくらい遠くに)「この場所は非公開だぞ、いいな」と念を押されたような強敵が、鳴きながら車の脇から出てきて、なんとそのまま鳴きながら私が乗っている車の下を通って運転席側へ抜けて歩いて行った(笑)これは…博物館行き間違いなしの体験。

なおアリススプリングスのガイドに言われるまでもなく、野鳥の詳細な場所は常識で非公開ですよ。野鳥に迷惑がかかる。


雨がやんだので再開。程なくしてマミジロセスジムシクイ!!一種増えた!


なんというハンサムな小鳥だろう。私は一発で好きになった。カノコスズメとハリネズミを足して割ったような外見をしている!ハリネズミ、じゃなかった、マミジロセスジムシクイにすぐ出会えたので二泊三日野宿の予定だったのに目的はあっという間に達してしまった。

さて…。

撤収します。

このままだとマズイことになるぞ、と経験が言っている。小雨の中、今朝進んできたバーズビルトラックを逆走。そしてバーズビルの村の入り口まで戻ってきたときに見たものとは…


「通行止め」

違反者にはすごい罰則をかけるぞ的なことも書いてある。もちろん早朝に私が村から出て行ったときにはこんなのなかったので、天候悪化で封鎖したものだろう。このことは雨になるとこの道が恐ろしいものになり過去に多くの人々が立ち往生したことを暗示させる。このときはまだ知らなかったが、Facebookなどで有力なバーダー何人かが私がいた場所よりもっと先のバーズビルトラックで雨によるぬかるみ地獄によりこの日から何日も身動き取れなくなったことをのちに知った。

私の「撤収」という判断は結果的にギリギリのところだったし、それを可能にしたのはクロオビトビとマミジロセスジムシクイをあっという間に見つけ終わったからだ。日本のような国土が隅々まで管理されどこまでも人間が住んでいる国と違い、オーストラリアではバードウォッチングに要求されるものがもう少し多い。

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