Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

ココス諸島探鳥記 その3

アラビアコアジサシ

ココス諸島が生物的にオーストラリア圏ではなくインドやマダガスカル島の方が近いということの象徴でもあるのがこのアラビアコアジサシ。この鳥はオーストラリア産鳥類リストが800種に達した人に送られる「800クラブ缶バッジ」のモチーフであり、人類でこれまで四人がその資格を得ているだけである。


←ちなみに600の時はシロハラセスジムシクイ、700の時はテンニョインコだった。




そんなアラビアコアジサシはさらにサービスが続き、最終的には頭上を飛び越えてくれた。


すごいかわいい鳥だと思うけど?
ココス諸島間の連絡を担うフェリー。1日2-3往復程度であり計画が大事。


ふむ、海岸はなかなか綺麗。一瞬水がないかと思った。あのチャールズ・ダーウィンをして日記に「Heavenly」(天国のようだ)と記させたのがココス諸島だ。

実際、ココス諸島のひとつディレクション島のビーチがこの年の「オーストラリアNo.1ビーチ」に選ばれていた。しかしあまりの秘境っぷりに一般世間からは「そんな絶海の孤島のさらに離れ島まで行ってられるか!」という反応が全国から寄せられた。まぁそれなら聞かなかったことにすればいいさ…。私も一週間滞在してディレクション島には結局行かなかったよ。鳥がいないようだから。




ココス諸島ではシロハラクイナが増えている。野良猫の駆除の成果だと言われている。
ココス諸島にはオーストラリア本土とはまるで無関係な文化や言語が使われている。食事もインドネシア風であり宗教はイスラムで時間になると島のモスクから大音量でコーランが流れ、人々はマレー語をベースとする謎の言葉を用いている。ここがオーストラリア領であることは明確に無理がある。


雰囲気は素晴らしい。

ココス諸島は長年ジョージ・クルーニー・ロスという男の私領だった。独自の通貨も発行し、近世まで独立状態を保っていた彼が暮らした家は現在ペンションとなっている。壁は砲撃に耐えられるようレンガ4枚の厚みを持つなどクルーニーロスによる絶海の孤島ココス諸島支配の歴史は面白い。




上空ではシロアジサシ達が珍客であるブッポウソウを追い回していた。種としてのブッポウソウはケアンズでも普通にいるが、それはオーストラリアへと渡る亜種であってココス諸島に現れるのは日本にやってくるようなアジア型の別亜種である。このあたりも別種となりそう。


更に、チラホラとシラオネッタイチョウも飛んでいた。


それからこの鳥。何も言われなければクロサギで終わってしまうところだが、ココス諸島では10年ほど前にアフリカクロサギが混じっていることが確認された。クロサギに黒いのと白いのとがいるように、アフリカクロサギにも黒いものと白いものがおり、更にその4者は普通にハイブリッドするというところからアフリカクロサギを一撃で見分けられる点はない。ノド、クチバシ、アシ、環境などの総合判定になる。ココス諸島に来た日からアフリカクロサギっぽいものは何羽かいたが、この写真の個体は第一人者によってアフリカクロサギとの判定を得ているものである。

(なお個人的にカラシラサギのように見える個体もいたのだけど、ココス諸島においてカラシラサギの存在は今の所オーストラリア鳥類学会において認められていない)

「アフリカ」とか「アラビア」という名前を持つ生き物が動き回るココス諸島は、それでもオーストラリア領である。こんなインド洋の真ん中の島で日本人が鳥を探しているなんて浮世離れしている。

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