Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

セスジムシクイ類調査2019 その2

ムナグロオーストラリアムシクイ(Purple-backed)
マウントアイザのあたりではオーストラリアムシクイといえば一般的なセアカオーストラリアムシクイよりもこのムナグロオーストラリアムシクイになる。オスとメスだとばかり思っていたが、写真をよーくみるとメスタイプの方にもごくわずかに青い羽が顔の周りに出ている。オスと若鳥オスだった。

少し専門的な話になるけどムナグロオーストラリアムシクイ(Variegated Fairy-wren)は2018年ごろの分類の変更により5つあった亜種の東海岸の亜種だけがその名前を引き継ぐことなり、それ以外の4亜種に関してはPurple-backed Fairy-wrenとして独立した。和名はまだない。だからこの写真の野鳥もPurple-backed Fairy-wrenでありムナグロオーストラリアムシクイではもはやないのだが、和名がないので今の所便宜上ムナグロオーストラリアムシクイと呼んでいる。

Purple-backed Fairy-wrenにも4つの亜種があることになる。

変わった分布図を持つマルオセッカ。初めてマウントアイザに来た10年以上前にはこれも結構苦労して出会った種だが、セスジムシクイを探す過程でいくらでも見つかる野鳥と今ではなってしまった。

さてセスジムシクイ調査は3日目に入った。調査では好きにセスジムシクイを探していいわけではなく(それは、単に探鳥という)研究者から指定された場所を指定された方法で指定されたインターバルで探していくので、そのポイントがどうしようもない時は見つかるわけはない。研究者は何を考えてそうしたポイントを地図上で指定してくるかというと、主に過去の山火事の経歴からだ。つまりこの谷は山火事から5年経過したエリア、この台地は3年、こっちの谷は10年…といったように。山火事とその再生にセスジムシクイがどう関連しているか…がメインテーマ。だから山火事直後の場所にはいないだろ?といった事を確認するのも調査員の大事な仕事なわけだが、面白いわけがない。この三日間、冴えない土地にばかり送り込まれてぼやき始めていたその夕方。それはその日の10調査地点の10個目という最後の最後だった。
「ビン」「ビン」と小鳥の地鳴きが藪の中からする。あちこちから。マルオセッカだろ…でもマルオセッカがいることはセスジムシクイ探しにおいて悪いことではない、と近寄っていくと小鳥が飛び出した。双眼鏡で覗くと


それは探しているむなジロセスジムシクイではないか!!近い!

しかも5羽はいるのではないかと!立派な群れだ。

私のムナジロセスジムシクイキャリアの中で一番しっかり写真に撮れた。

私のチームの二人と合流して盛り上がる。もう夕暮れだから明日の朝みんなでもう一度見に行こうという話をしていたのに、その中の一人が明日の朝まで我慢できずに一人で探しに行き、2羽のムナジロセスジムシクイを観察した。結局次の日の朝は全員で探したけどもう見られなかったし、この二人は今回およそ10日間調査に参加したがムナジロセスジムシクイを見たのはその夕方の一回っきりである。しかも私が見つけた群れの中の2羽を見つけ直しただけの非公式記録。私は今回最終的には14羽記録することになるので、ものすごい差があることがわかる。セスジムシクイは偶然以外では野鳥観察のエキスパートにしか見つけられない。だから一部の人は夢中になる。

研究者が指定する調査地点はロクでもないところも多いが、セスジムシクイはいなくても野鳥はすごく多い場所だったりすることもある。この干上がった小川の川原もそんな一つで、普通のバードウォッチングで是非利用したいようなところだった。

ウスユキバトとかマダラニワシドリとか

オグロキノボリとか。とにかく鳥の多い一角だった。

とりあえずムナジロセスジムシクイを見つけて撮影もできたし、部下の一人にも見せられたので安心した。オーストラリア内陸部は海から遠く離れ、湿度も低いため独特の夕焼けを見せる。

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