Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

イーチャム湖とバリン湖、キャンプ(中編)〜オーストラリアの全ての野生動物を求めて

半月
前編から続く)
遠い意識の中で、車の天井を鳥が突くような断続的な音がしている。そのまま眠り続けたが、何時間かたってついにしかたなく起き上がる。この音は何だろう?雨音にしては強すぎる。窓ガラス越しに外を見るがそれほど強い雨ではない。外に出てみると、音の正体は時折吹く強風で木がしなり、その時に大量のしずくが一斉に車に降ってくるからだとわかった。


さて、すっかり目を覚ましてしまった。とりあえずお湯を沸かしてコーヒーを入れる。時計は朝の4時を指している。夜行性動物達は起きているだろうか?いや、この天気では活発ではないだろうし、いたとしてもまともな写真なんて撮れないだろう。カーテンフィグツリーへまた行ってみよう。(写真は日中のカーテンフィグツリー)

 残念ながら、移動したが状況は変わらなかった。もうすぐ夜が明けるし夜行性動物はここまで。カモノハシでも見に行こうかと思ったけど、もう日本記録を申請できるくらい見ているからいいや。


 レイクイーチャム(イーチャム湖)へ移動する。大昔の噴火口が埋まり水がたまって出来たカルデラ湖。透き通る水は多くの人を魅了している。湖を一周するハイキングコースは3kmあって、普通に歩き続ければ1時間かからないだろう。日が昇る寸前の、高原のカルデラ湖は鳥の大合唱だった。今まで聞いた事がない程の、全方向高い所から低い所からあらゆる種類の鳥が1日の始まりを歌っている。映画館の中で、全方向から鳥の声がなっている状態といえばいいだろうか。

ハイイロオウギヒタキがいい被写体になってくれた。近づいても逃げないし、動きも派手。いい子だねぇ。ミミグロネコドリ、ムナオビエリマキヒタキ、ムナグロシラヒゲドリも。

極小のチャイロセンニョムシクイも

 半周程したあたりで、足の指に違和感を感じた。あーやられたな、と思って靴を脱ぐと結構派手に出血している。タイガーリーチ(ヒルの一種)だ。どうやって靴下の中まで入って来たのかは不明。何日間かは多少痒いけど、それ以上の害はないので許してあげよう。写真は自主規制します。

 ちょうど湖の対岸付近まで来ると、奇木を多数見かける。結局3kmのコースに二時間かかって一回り。

キアシアンティカイヌスの写真が撮れたのは収穫だった。(ゴッドマンアンティカイヌスの可能性もあり)
そのまますぐ近くの姉妹カルデラ湖、レイクバリーンへ移動する。


 目的は、カンガルーの仲間で最小のニオイネズミカンガルーの写真を撮る事だ。一周6kmのハイキングコースに入ってすぐに発見!やぶのなかでがさごぞしていて、カメラを構えしばらく待ったけど出てこない。まぁ、こんなに簡単に見つかるくらいだから沢山いるんだろうと思って先に進んだ。(結局これ以降見なかった…。そんなもんですよね、人生)

 しばらく行くと、また薮の中でがさごそ何かが動いている。双眼鏡を覗こうとした時、私の前を絶叫しながら黒い大きな鳥が飛ばずに、相当なスピードで走り去っていった。え?なに?今の?左手の薮のなかにはまだ3羽いる。じーっと待っていると、今度は子供と思われる二羽が同時に同じように絶叫しながら走っていった。あ!メジロハシリチメドリだ!
(英名 chowchilla)
 しばらくすると、森の反対側へ走り去ったメジロハシリチメドリの3羽がわーわー騒ぎ始めた。どうやら、取り残された1羽を呼んでいるらしい。両者の中間には私がいる。道を譲ってあげようとも思ったけど、メジロハシリチメドリの写真はいままで撮った事がない。取り残されたお母さんメジロハシリチメドリ(成鳥メスは喉が赤いのですぐわかる)の突撃を待ち構える。
 高まる緊張。
 わーわー騒ぐ3羽。
 機会をうかがう最後の1羽。
 …。
 …。
(ガサッ!)
 来たーーー!!
 カメラの連射!連射!連射!
判定は…メジロハシリチメドリの勝ち。
速いよ…。ハシリトカゲみたいだ。暗い熱帯雨林の中を疾走した黒い鳥。一枚もまともに写っていなかった。AFSレンズ&秒5コマ連射くらいの機材ならある程度撮れたはずなんだけどなぁ。つくづく、野生動物写真の成功率は財力に比例するんだ。
(後編に続く)

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