Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

クィーンズランド州北西部探鳥5

その日の予定キャンプ地は想像を超えた奥地にあって、未舗装道路を延々と。途中に「鉱山エリア 立ち入り禁止」「毒」とかのひるむ看板。いくら何でも道を間違えただろ?、とかうろうろしている間に日が沈んでどうしようかなぁという状況に。引き返し始めた時、一台の対向車がやって来たので強引に止め、「〜さんの家を探してるんだけど…」と尋ねたら。「そうか。それは俺だぜ」と。さすがオーストラリア奥地。あり得ないことが起こる。
 おじさんの先導でたどり着いた先は一言で表せば超僻地の牧場。でも牧場といっても日本のそれとオーストラリアでは根本から異なるから、見た事が無い人は原野、山林と思うといいかもしれない。牛も特段の世話を受けるわけでなく、基本的に自給自足で生き抜いている。おじさん一人で切り盛りしてる。廃屋に一晩世話になった。窓もドアも事実上無く、発電機をまわして電灯がつくとおびただしい数のガやナナフシやゴミムシやヤモリやコオロギやハサミムシやゴキブリ、ガガンボ、クモなどが住んでいた。さらにゴミや鍋や釜や食器やらビニール、プラスチック、ネジ、錆びたバネ、古雑誌が廃屋に散乱。人によってはこれは恐怖体験アンビリバボーである。O君はもう何も喋らなくなった。初めてオーストラリアに来て、いきなりこんな所に連れた来られたらその衝撃も分からんでも無い。二人はその恐怖の館で寝て、私は外に平らな土地を見つけてテントを張ってすやすや寝た。



翌朝おじさんの案内で更に奥地へ。私有地、というにはワイルドすぎるとこだ。何しろ普通にパープルイワワラビーのコロニーとか。一応昨日もそれっぽいのは見てたけど。この広大な大地が1人の所有物なのかー。あの谷も。あの山も全部庭の一部…

普通にコマチスズメ。これは初見。

水場には綺麗なニジハバトや

ハイビタイコバシミツスイとミドリコバシミツスイのミックスや

コキンチョウ(幼)やオナガキンセイチョウや

激やせディンゴまで次々やって来る。

しかしクロハヤブサが上空に現れ、更にアカハラオオタカが水場に降り立ってしまって小鳥が全部いなくなった。

ので、周辺の岩山に挑む事に。昨日カルカドンセスジムシクイは完璧に撮影できたので残る一種、ムナジロセスジムシクイが狙いだ。また3人散開。別行動はあまりよくないとは思うんだけど一応私有地内だし、鳥果第一で。

私は岩山の中腹をずっと平行にトラバースする感じで進み、ここでもスピニフェクスに刺さりまくり、ムナジロセスジムシクイは影すら無く、陽が高くなってきて上がり続ける気温と日差しに心が折れてきた。情けないが、一旦ベースキャンプへ撤退しよう…と下山してくると既に二人とも帰ってきていた。なんだ。やっぱりそうだよね!?

 とりあえず早めに昼食を作る。午前中でこれだけ暑いのだから、そんな事をしているうちにますます暑くなってしまうのだがちょっと山登りを継続できる状態ではなかった。情報交換の結果、私とchiemomoさんは比較的同じようなエリアを探っていた事が分かり昼からは違う環境を攻める事に。O君も「今度は一緒に連れて行って下さい!」と言うのでそのように。

 準備。持ってきていた折りたたみ式の布バケツに水を張り、服を浸してずぶ濡れにした。衣類の素材を厳選する、というのは内陸部では基礎だが戦うべき相手は尋常ではない気温であり、こちらも尋常ではない対策が必要だ。要は、凍死を招いたり風邪を引くような行動をすれば涼しくなる理屈であり、ずぶ濡れの長袖長ズボン覆面帽子で出発。おおおお、凄い、少々くっついて動きにくいが全身の体温が奪われて寒いくらいだ!これは特許を取ろう。と喜んだがオーストラリア内陸部の日差しの前では10分くらいで効果を失った。ジーンズが20分でからからに乾く、という話は本当だと思う。

 いよいよ斜面に取りかかる、というところでO君が「すみません、やっぱりダメです」と離脱。残った狂人二人は強烈な暑さの中ムナジロセスジムシクイを求めてその後も何時間も道なき山を登り、下り、刺さり、滑り落ち、また登りと健闘したと思うけど本日二回目の敗走。ムナジロセスジムシクイは一体どこにいるんだ?

オジロオリーブヒタキ。でもケアンズ周辺でいつも見てるのとは全然雰囲気が違う?と思ったら亜種違いだだった。

クロズキンヒタキの若。ノドグロモズガラスがそのまま小さくなった感じ。

←これまで見た中では最高得点を付けたい見事なオオニワシドリのアズマヤ。質感、仕上げも文句なし、と思ったらオオニワシドリもケアンズとは別亜種だ。その為だろうか。

ベースキャンプに戻るとO君の他におじさんが来ていて、「夕方から雨がやってくるな。そろそろ出ないと麓へ戻れなくなるぜ」と言う。砂漠の雨は降り出せば凄まじく、道路などあっという間に無くなってしまうのはよく知ってる。帰れなくなるのもまずいので、心残りながらこの土地を後にする事にした。こうして写真を並べてみると別に悪くない感じに見えるけど、第一目標のムナジロセスジムシクイが最後まで見つからなかったので敗北という感が拭えない。夕方、温度計を見たら42度を表示していた。おい、昼間は一体何度あったんだ。

マウントアイザ近くまで戻ってキャンプ。夜半、ペグダウンしていないテントが動かされる程の強い風と雨。寝袋の中で目を覚ました。こういう厳しい自然の地域では、地元民の天気予報に勝るものは無い。さすが。

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