Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

12回目のダーウィン・カカドゥ その4

アカオオタカ営巣2019
「そこら辺の猛禽類ではなかった」という第一印象は間違っておらず、まさしくそれはオーストラリアで最も珍しい猛禽類のアカオオタカのメスだった。別に道端にいたわけではなく、道路からかなり奥の木に止まっていた中型サイズの鳥を時速100kmで走る車を運転しながら見逃さなかったのは我ながら人間業ではないと思った。

最高に盛り上がる我々一行。大草原に落としたヘアピンを見つけたようなものだと思う。そのアカオオタカのメスは梢から梢へ盛んに動き回り、我々も林の中をついて行く。もちろんストレスを与えないように心がけた。

目線は我々を見ておらず、単に林間を動き回りながら餌を探しているのだと思う。

アカオオタカはワシやトビのように上空に舞い上がったり、ハヤブサのように空中戦を演じるタイプの猛禽類ではなく、ほぼ常に林間を短距離だけ飛び樹冠部より上に出ることはまずない。したがって飛翔写真もそんなに出回っていないのだが。餌を探して盛んに飛び回るこのメスは我々に飛翔写真の機会を十分に与えてくれた。

と、そこに何か猛禽類の巣のようなものが。ねえ、あれってもしかしてアカオオタカの巣じゃ…。なんということだ。距離をとってしばらく観察していると

成長したヒナも二羽いた。
ここで話を戻すけど、一部の野鳥関係者の間で知られていたカカドゥ国立公園南部のアカオオタカのつがいは、今年前半の嵐による営巣木の損傷でそこから去っていったと書いた。そのつがいは捜索の結果ごく少数の研究者やガイドによって新しい営巣木が割り出されていた。もちろんそれは教えてもらえなかったが、ごく最近あるガイドが写真のみ公開したその新しい営巣木で抱卵するアカオオタカの様子は、今回私が発見したアカオオタカの営巣木とは一目で「全然違う木である」ことがわかる。さらに、私が発見したこの巣は抱卵の段階をとっくに過ぎてヒナはかなり大きくなっていることから「2ペア目の全く新しいアカオオタカのつがい」であることが確認された。そしてこの二つがいがこれまでの歴史上でおそらく最も近接する二つの巣であることに驚きを覚えた。
大変な希少種であり学術的に意味のある発見の報告という意味で前衛的な非公開グループのFacebookグループにこの発見のことだけを投稿し場所は公開しないと書いたのだが、思い出せない数の研究者や野鳥ガイド、大学、役所などから場所を尋ねる問い合わせが押し寄せ、それは2ヶ月経った今でも続いている。このような、異常な人気を持つ繁殖中の希少種に関しては「何も見なかったことにする」以上の保護はないように感じた。研究者もアカオオタカの研究上どうしてもこの場所が知りたいのであれば、プロのガイドである私を研究費にて雇用すのが筋であり、無料で提供してというのは筋が通っていないと私は考える。

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