シンプソン砂漠。バーズビルの西に広がるそれは、オーストラリアの砂漠としては珍しい砂の海を持って人間を拒絶する。このバーズビルから二個目の砂丘はビッグ・レッドと呼ばれここから始まる1000を超えるという砂丘の波の第一波に当たる。私は冒険野郎ではなく野鳥マニアなので、ビッグレッドだけ記念に登ったら引き返すよ。もう誰か上にいるね!
っていうか、これを自動車で登れと!?数えきれないほどこれまでに撮影されて来たオーストラリア4WDカルチャーの五大聖地の一つである。フワッフワの流砂は普通乗用車なら1mだって進めないよ。というかビッグレッドにたどり着くはるか前にスタックしてるだろうけど。最後の10mくらいがヤバそう。
はっはーどうだ!登りきったぞ!
チキン・トラックを通ったことは極秘である。
さすがにノーマルタイヤでこんなところ車が走れるわけないだろ!
なかなか世紀末的なところだな。
麓ではマッドマックスやってるし。
さて、エイリアンムシクイだったっけ?←シロハラセスジムシクイ
それをもう少し見ておこう。
←そうそう、昨晩の砂嵐は天気図でいうとこんな。
いや…こんなのって(笑)むしろ砂漠で竜巻のような砂嵐に巻き込まれるというラッキー体験だったと思おう。テントで寝ていたらきっとオズの魔法使いになって、シンプソン砂漠深部の砂丘に突き刺さってミイラとして後世に発見されるところだったが、被害は野菜炒めだけで済んだ。
この爆風が吹いている赤丸のゾーンは北海道以上の広さだと思う。人間は500人くらいしかいないだろうけど。
程なくシロハラセスジムシクイを再び発見。セスジムシクイ最強と称されるムナジロセスジムシクイを何年も相手にしている身にとってはすごく簡単な野鳥に感じる。
そこなんだよね。一般のバーダーは一度しっかり見たり(見せてもらったり)撮った(撮らせてもらった)種類は一気に関心が下がり下手したらもう2度と見なくてもそれほど差し支えない。しかしプロは、それがどんなに難しい種類で、どんなに険しい厳しい土地にいようが毎年毎年、人によっては毎週毎週、現役のあいだ中は何十年にも渡ってそれを見つけ続けなければならない。その経験の違いをおわかりいただけるだろうか?
あっこら!
まあこんなところかな?300mm手持ちなんだし、二箇所で探して二箇所とも見たし次の事をします。
そういえばシロハラセスジムシクイはオーストラリア国内で観察した野鳥の種類数が600種を超えた人がもらえる缶バッジ↑のモデルだが、それは事務局長みたいな存在の人が600番目に見た野鳥がこのシロハラセスジムシクイだったからだ、と読んだ気がする。
夕方ビッグレッドに戻ってみると、砂丘から日没を見学する人々で盛況。シャンパンがあれば最高。
…。(ツッコミ待ち)
明日は南へ転進し、高名なバーズビル・トラックへ入る。そちらはビッグレッドと違って観光的な素地の何もない、ただ変態だけが進む悪路である。
(しばらくしてから追記)バーズビルの村のガソリンスタンドで、グチャグチャに壊れたRav4と、その横にいる中東系の男を見かけた。彼はガソリンスタンドに来る車に「アデレード…」「アデレード…」と話しかけていたが無視されていた。私自身も昔経験したのだけど、適切でない車で僻地にやって来た外国人や都会の人にはオーストラリアの僻地にいる人々は驚くほど冷たい。冷たい、というか本気で罵倒される。Rav4と彼がアデレードに帰れたことを祈る。