Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

セスジムシクイ調査キャンプ2022 その1

ローンヒル渓谷もう10年近く続けている毎年5−6月頃のセスジムシクイ調査ボランティア。年によってその長さや目的地は多少異なり、今年は調査の中心地であるマウントアイザ班とローンヒル国立公園班(写真)とに分かれることになった。近年マウントアイザではセスジムシクイは10年前とは打って変わって好調である一方で、ローンヒル国立公園のセスジムシクイは一種の飛地であって昔からひたすら難しい。
それなのにローンヒル国立公園を担当することを自分から表明したのはマウントアイザへの若干の飽きと『クィーンズランド州でNo.1』と私が公言して憚らないこのローンヒル国立公園の美しさを久しぶりに見たかったのとの両方である。


ローンヒルまではマランダからでも1日で着くのは無理なので途中で1泊して、いや豪華に2泊してのんびりと進む。初日は探鳥地ジョージタウンを通過。セキセイこそいなかったがそれ以外のメンバーはみんないた。写真はスズメとイカルを足したようなキバシキンセイチョウ。例年なら0〜数羽を見かけるだけだが、今回は20羽くらいいて過去最多記録。

ウスユキバトも放浪性があり年によってかなり変動があるけど今年はジョージタウンはおろか、アサートン高原北部にも、そして驚くことにケアンズ市内にも若干出ている。

しかしさすがジョージタウン、フィンチ類の豊富さは素晴らしい。これはカノコスズメ。

最近すごく人気の出てきたキンカチョウもまあまあいた。

ハゴロモインコ。過去2年、海外に旅行に行くことを封じられたオーストラリア人(世界一旅行にお金を使うとも言われる)が仕方なくオーストラリア国内の辺境などを旅するようになり空前の国内旅行ブームが続いていた。ケアンズのような既に行ったことがあるようなメジャー観光地はスルーされ、旅先を求めてアウトバックだとか最北端だとか砂漠だとか、これまで物好きしか旅しなかったエリアに若いファミリー層や富裕層も流れ込む形になったためだ。しかし多くの海外が旅行客受け入れを再開した今、オーストラリア人達はそちらへ飛び出していき国内の田舎は比較的落ち着いていた。もう一つの理由は歴史的なガソリンの高騰で生活がタイトな層が自動車旅行を控えているからとも言われている。
ついた!ローンヒル渓谷はやはり美しい。周りは何百キロも、あるいはそれ以上も土埃舞う半砂漠地帯だけに余計にローンヒルの水と緑にはハッとされられる。

セスジムシクイ調査班は今回ローンヒル国立公園管理局のゲストなので、初日と最終日は職員居住区にあるこの来客用と思われる快適な半二階建ての家をタダで使わせてもらった上にガソリンも配給された。ローンヒル国立公園は一番近くの街らしい街まで3時間の辺境、職員は皆住み込みになる。どこの都市からも遠いことでこの国立公園は来訪者が限られ、観光地化を免れているだけだ。

ちなみに今回の車の屋根の上はこうなっている。大きな変化として近年愛用していたルーフトップテントを売却し、古典的なスワッグ(オーストラリア式のテントとマットレスが一体化した帆布製のテント)利用に変わっている。ルーフトップテントは便利だが天井を独占してしまうので、二つ目のスペアタイヤだとかマックストラックスを車内などに収納する必要があった。そしてルーフトップテントは平均して70kgと重く、それが高い位置に乗っかっていることは走行性能的に好ましいことではない。何より、ルーフトップテントが必要ない年間300日以上は全く無駄な巨大物を載せ続けていることになりそれがちょっと嫌だった。あなたがフォークリフトを所有していて簡単にルーフトップテントを必要に応じて積み下ろしできる、とか常に4−5人の大人の人手があって人力で上げ下ろしできるさ、という場合はその限りではない。
スワッグは嵩張るがテントとマットレスと寝袋と枕を強引に筒状に巻いたものと考えてほしい。全部足しても20kg程度、ルーフトップテントより遥かに軽く、広げればそこにはもマットが敷いてあって寝袋も敷いてあって枕も置いてあってすぐ寝れる、という出し入れのない手軽さはルーフトップテントと同様。旅が終わっても天井から降ろすだけであって、ルーフトップテントのように天井に半永久的に居座ることもない。


夕暮れを見に裏山に登る。ヒメモリツバメがいた。

チャバラモズツグミは断崖絶壁の野鳥であり、その大きな鳴き声は渓谷に幾重にもこだまする。それはカカドゥ国立公園やローンヒル国立公園を象徴する声だ。

ケアンズ周辺のとは異なる亜種のサメイロミツスイ。

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