Wikipediaからの引用から始めよう。『コシジロアジサシ – サハリン、カムチャツカ半島、アラスカの沿岸で繁殖する。非繁殖期の行動は不明だが、フィリピンで記録されたことがあることから、南下して越冬しているものと思われる』
非繁殖期の行動は不明。そんなコシジロアジサシが、シドニーのずっと北の海岸で一人のバードウォッチャーの2年越しの奮闘により十数羽も発見された。これにより、これまでずっと謎だったコシジロアジサシの冬の居場所はフィリピンどころではなくてなんとはるか南半球オーストラリア東海岸である可能性が高くなってきた。アリューシャン列島で見られるため英名はAllutian Ternというのだけど、アリューシャンをもじって、業界ではすぐイリュージョンTernと呼ばれるようになった(笑)
タイトルの「Twitch」とは、バードウォッチングの世界において本来分布しないような極めて珍しい野鳥がある国に迷い込んだ場合にそれを見に遠路を駆けつける狂った行動の事だ。
年の瀬も迫る12月29日、今回の戦いの場はシドニーから何百キロか北の海岸。夕方のフライトでケアンズから夜のシドニーへ飛び、深夜もレンタカーを走らせて高速脇で仮眠。夜が明けると早速海岸に飛び出した。すごい風で砂嵐が襲う。
海岸ではコアジサシが繁殖していた。ケアンズではもう見られなくなってしまったコアジサシの営巣。ここニューサウスウェールズ州では絶滅危惧種であり、もちろんこの繁殖地はフェンスで囲まれておりレンジャーも巡回しているそうだ。
そして。あれか。オオアジサシや無印アジサシ、コアジサシ、ギンカモメが群れているがあの中にコシジロアジサシもいるに違いない。コシジロアジサシの非繁殖期の居場所が有史以来不明だったのは、冬羽が無印アジサシに酷似しているため見落とされ続けてきたためだ。それにしてもこのままでは鳥達は途方もなく遠いな…。
砂嵐の奥に怪しい2羽!!しかしこの距離を何とかしないといけない。コアジサシの繁殖地として手前側はフェンスで守られているのだが
この防御線を犯すことなく(←当たり前だ)あの怪しい2羽に近づくには…
フェンスのない海の中を歩いて行けばいい。そうだろう?
(過去記事 珍鳥の為なら命も惜しくない)、(珍鳥を見に海峡を徒歩で渡るバードウォッチャー達)
これが成功し、コシジロアジサシ達ゲット!間違いない!一種増えた!(ここは保護区域外。)
7羽いたと思うけど、最も近くでのんびりしているコシジロアジサシの1羽に狙いを絞る。背後はオオアジサシや無印アジサシ達であってコアジサシではない。
おっお前それは挑発か??
さっきまでウロウロしていた本土の方をみると砂嵐でドバイみたいになってた。オーストラリア人メンタル強すぎだよ。もう家に帰りなよ…
幾重にも張られたアジサシ防御線に苦戦するバードウォッチャーその1。
アジサシ防衛線を突破できないバードウォッチャーその2。アジサシ側としてはこうしてフェンスでバードウォッチャーの接近を食い止め、その隙に砂嵐で攻撃する長篠の戦いスタイルだが
既に海の中を歩いて砂丘の風裏へと入っている私に隙はない。コシジロアジサシの飛翔。
コシジロアジサシ4羽整列。
学名 | : Onychoprion aleuticus |
---|---|
英名 | : Allutian Tern |
これを撮った後はシドニー空港へ向けて3−4時間かけて撤収。3時間のフライトで深夜にケアンズ空港につき、空港に止めておいたランクルで山の上のマランダの家まで帰ってきたときには日付も変わって大晦日になっていた。最高の年末じゃないか。
いやあ今回もいいTwitchだった。やはりTwitchは飛行機移動→レンタカー→車中泊→達成→空港泊といった流れの方が盛り上がる。