Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

クイーンズランド州6000kmドライブ その9(ヒメキスジミツスイ)

海から見たサーファーズパラダイス内陸部から1000kmを走り、沿岸部の都市ゴールドコーストにやってきた。

ここから毎月一回、海鳥同好会が釣り船をチャーターして沖合の鳥を見に行くということを行っていてそれに参加する。なお悪天候の予報のため直前に一週間延期されたのは以前書いたとおりである。定員10名程度の釣り船で太平洋の外洋、大陸棚の終わるところまで出ようぜということがどれほど無謀なことかわかるだろうか?言い方を変えれば「かなり海況が良くない限り出船できない」船であり、海外から飛行機やレンタカーなどを駆使した旅行ではリスクが大きすぎて事実上参加不可能だろう。


実際この日も上下左右に絶叫マシンのように揺れ、立っているどころか座っているのさえ何かにしっかりつかまっていなければ難しかった。揺れ、というよりは急上昇からの急降下というべきで私も何度か体が完全に宙に浮き、ドアに相当な勢いで叩き付けられてドアノブが折れた。はたまた机で突っ伏して寝ていた男性が、揺れで高く宙に浮き背中から床に落下したりしていた。それほどの揺れであり、これまでに海に転落した人や骨折した人は大勢いるよということだった。さすが同好会。営業船なら強制捜査→廃業間違いなし。平均以上に健常である人間以外は全く相手にしていない船だ。もう一度書くが、たった定員十人少々の小舟でフェリーや貨物船が通る太平洋へ飛び出していくわけで。




そんな大の大人が宙に掘り出されるような揺れの船上からの撮影には身体能力が要求される。素早く撮影し、すぐに何かにしがみつかないと私のようにノブが折れるほどの勢いでドアに叩き付けられたり、転倒して運も悪ければ海へ落下する。私は乗り物酔いはほとんどしないが、船酔いすればさらに地獄の一日だろう。三時間かけて大陸棚の終わっている外洋まで行き、そこに1時間ほど浮いていて、また三時間かけて帰ってくる。全く逃げ場はない。


ハジロミズナギドリ。


カワリシロハラミズナギドリ。これらの画像は転倒しながら、宙に舞いながら、壁に打ち付けられながら一瞬で撮影されたものだ。


クロハラウミツバメは日本語のwebには初登場です。(Black-bellied Storm-petrel,Fregetta tropics)


おお、腹が黒い!

ウケる海鳥観察船を終えて、同船者から聞いたクロムネミフウズラが見られるかもしれないダム湖へと移動。翌朝探してみると確かに右手にメス、左手にオスというペアのクロムネミフウズラが見られた。やましい事があるので詳細は書きません。

←さて夜走行すると車はぶつかってくる虫だらけになる。

旅も終わりに近づいたが、あとはヒメキスジミツスイを見つけに行くだけだ。数百キロを走り(簡単に書くなぁ)彼らの分布する山地へ車で上がっていって探し始めた頃、エンジンの警告灯が点灯しノッキング現象を起こすようになって慌てる。こういう旅先、特に僻地でのトラブルはやめていただきたい。


だましだまし野営地へ向かう途中で見たフウチョウモドキのメス。これは私がこれまでに見たフウチョウモドキの中でもっとも北にいたことになる一羽だ。




ヒガシキバラヒタキ。

目的のヒメキスジミツスイだが、知人二人は10日間この山地にいても見かけなかったと記していた。私ももっと若い頃、1-2時間か探して見つからなかった経験がある。だが今はもう違う。何千日というオーストラリアでの探鳥経験値が違い、コスタリカ、メルボルン、アリススプリングス、カンボジアなど世界各地の有名野鳥ガイドからも吸収してきた様々なスキルもあり、全土に張り巡らせた情報収集力が違う。ヒメキスジミツスイはもう私には見つけられない相手ではないよ。


ほら翌朝探し始めてたった20分後。ヒメキスジミツスイ、Eungella Honeyeater(Lichenostomus hindwoodi)!


ヒメキスジミツスイも写真は日本語のwebには初登場になる。


この6000kmを超える自動車旅行で一番のショット。これで満足したのであとはケアンズに帰り着けるかどうかだ。

不調になった車を数十キロごとに休ませながら、各地でクラクションを浴びながら、そこから750kmを走ってケアンズに帰ってきましたとさ。難航した修理を終え(厳密には治りきることはなかったが)今でもX-Trailはセカンドカーとして保有しているけど、この旅が最後の大舞台となった。


おまけの動画。

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