普段から干からびているアウトバックながら、例年にも増して厳しい少雨に見舞われていた昨年。水場には多くの生物が集まってきていた。キャンプ場の蛇口から漏れる水を飲むカノコスズメ達。
発汗により鳥類よりも水分を必要とする哺乳類ももちろん。ケナガワラルー。
着陸するサクラスズメ。先客はキンカチョウ。
さらにオオニワシドリ、キイロコバシミツスイ、ベニカノコバト、キンカチョウ、ハイイロモズツグミ。シャワーにしているのは誰だ。
足の長いスキンクBlotched Sining Skink(Cryptoblepharus megastictus)。バラナスのように胴体が地面から大きく浮いている。
ヒロオトゲハシムシクイは英語でInland Thornbill(”内陸のトゲハシムシクイ”)という素敵な名前を持つ。
夕方の金色の日差しに染まっていくスピニフェックスの大地。
予定では今晩も同じ場所で連泊キャンプだったけど、概ねこの地区で見るべき野鳥は見られたこともあって半日早く出発することにした。つまり夕食まで食べたらキャンプを撤収して夜間アウトバックを移動しながら動物、とくにヒゲナシヨタカを見るべく夜通し動き回りながら次のキャンプサイトへ移動する(夜のアウトバックを走るのは慣れないと非常に危険かつ、レンタカー各社は禁止。真似しないように)。ヒゲナシヨタカ(Spotted Nightjar)はちゃんと写真に撮れたことがないので今回の旅を考える上でもメインの一つだった。
真っ暗な原野を車のヘッドライトだけが未舗装道路を照らす。次の集落がある50km位先までで、私がおそらく存在する唯一の人間である。いろいろな動物が道路に飛び出し、急ハンドルを切れば横転しブレーキを踏めばスリップする。激突すれば車が壊れ即原野での立ち往生を意味する。あ、ヨタカ系が横切って路肩で止まった!!
狙い通り。ヒゲナシヨタカ!
未見または未撮影のオーストラリアの野鳥のためなら命をかけられる。そんな男にとって、このヒゲナシヨタカ作戦の成功は忘れられないものになった。周囲はブラックホールのように暗く、無限に広かった。深夜にキャンプサイトに入り興奮を抑えながら寝袋に入る。
「この村の水はどこから持ってきているのか?」と尋ねたら「4つの井戸で地下1300mから汲み上げている」だって。
1300mの深さの井戸で水温は98度。それほどまでに掘り下げないと水がない。温泉を通り越してもはや原油採掘のレベルである。オーストラリアという所は海沿い以外ではそれほどまでに水の存在しない大地だ。水道料金は凄いことになっているのでは。