Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

アーバインバンク一泊二日旅行 後編

アーバインバンク前編から読む。


アーバインバンクの集落や資料館で古いガラクタに悶えたあとは、周辺の探検に出かけた。

←この写真の遺物こそ、四国ほどの面積を支配したジョン・モファット帝国のシンボルの一つバルカン鉱山跡地。オーストラリアの輸出額の三分の一を牛耳っていたと言うから往年の権勢が忍ばれる。アーバインバンク周辺には鉄道網がしかれ、それはキュランダ鉄道などよりも更に前の話である。




なんという男前な鉄塔ですこと。その足下には…


地の底へ続く大穴が口を開けている。このシャフトは一時期「南半球で最深の穴」とまで呼ばれ、掘っても掘ってもひたすら良質の錫を産出し続けた。ちなみに深さは450m程あり、東京スカイツリー最上階展望台までをすっぽり収納できるという途方もなく深い穴が、ここから奈落の底へ続いている。


というか、実に怖い警告をしておく。

何かガラクタが落ちていないかなと周囲を歩き回ったら、こうして蓋も何もしていない、柵で囲まれてもいない大穴があいていてのぞき込んでみたらまったく底は見えなかった。これも深さ何百メートルもあるのだろう。

いつものことだけど私は一人で来ているし、誰もその行き先も知らないのでこの辺の落とし穴に落ちたら即人生終了を意味する。アーバインバンク行ってみたいという人は道路から離れないようにするか、複数でザイルを結んで歩くしかない。単独なら植村直己のように腰に青竹を差して歩くとか。

なお、最近私は急死したりしたとき最愛のアサヒ(ペットのインコ)が餓死することを非常に心配し、英語で「私が意識不明になったり急死したらどうか急いで家に居るアサヒを助けてください」カードを作成して、車に置いたり財布の中に携帯している。




このスーパーマリオが潜っていきそうな穴は何何?とのぞき込んでみたら、大きな竈のような造りでこれは底が見えた。さっきのような何百メートルの底なし穴に落ちて即死するよりも、このへんの中途半端に生存しそうな穴に落ちて、脱出できずに衰弱死していくのが一番残酷だと思う。イヤだイヤだ。


あまりの落とし穴地獄とその放置プレーに戦慄した私は、アーバインバンク周辺の野山を歩き回るのを止めることにした。ジョン・モファットによって採掘し尽くされたこの辺りの山はこうした穴だらけに違いない。


そしたらタイムスリップしたかのような家に出た。もしかして知らない間に穴に転落して、天国に来たかしら?と思った。


おっさんの歓迎を受け、コレクションを見せてもらう。このフォードはなんと完動品で公道も走れる。おっさんは、およそ20年間この付近の野山を歩き回って、落ちているガラクタを拾い集めているそうだ。なんだか嗜好が似ているじゃないか。


ところでこれは太田ビンテージコレクションの一つで、アウトバックの涸れ沢で昔私が拾ったもの。これは一体何であろうかと以前から疑問に思っていたが…


おっさんコレクションのあれ↑にそっくり。馬具の一部らしい。そうだったのか。

ところで急にアーバインバンクに来たのは理由もある。ネット上でアーバインバンクの古い家が1500万円くらいで売りに出されており、真剣に魅力を感じてしまったから。


実際のスクリーンショット。


もはや魔女の家。

実際に覗いてみて、惹かれるがやはりまだ非現実的だ。私は30歳過ぎの時にちょいリタイヤして今に至るが、もう一段階進んで「ほぼリタイヤ」くらいになってからでないとケアンズ空港まで三時間以上かかるアーバインバンクに住むのは難しい。しばらくは仕事に便利なケアンズ市内で我慢することにして、5年後くらいにまた考えよう。


アーバインバンク周辺では現在でも露天掘りが続いている。


約25年連続プラス成長という先進国としては類を見ない安定した経済を支えるオーストラリアの稼ぎ頭ではあるが、自然へのダメージも大きい。

なお日本の一人あたりのGDPは三万五千ドル程度なのに対し、オーストラリアの一人あたりのGDPは六万ドルを超え、更に成長を続けている。大卒初任給が数十万円でも特に珍しくない。こいうった数々の指標ではオーストラリアではとっくに日本を抜き去っており世界でも最も豊かな国の一つながら、ネット上では未だにオーストラリアに関してとんちんかんな何十年も前の認識を持って発言している日本人を時折見かける。

さて、アーバインバンク旅行記の終わりはやはりバルカン鉱山跡地の大滑車にする。

5月はアウトバックの僻地へ三週間のボランティア鳥類調査に出かける。全行程が原野での野宿であり、無補給区間も二週間に及ぶ大規模なものだ。そこでまた面白いオーストラリアとの出会いを期待している。

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