Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

タスマニア探鳥7


タスマニア南西部に広がる世界遺産の広大な原生地帯を訪問する為と、そこにわずか20数羽だけが生存しているアカハラワカバインコを求めていざこの世の最果ての一つへ。天候が良いときしか飛べないためにフライトキャンセルが多発し、原野に多数の置き去り者を出すことで知られるセスナ便に乗った。そのフライトの模様(画面右下の歯車をクリックして720pかできれば1080pの画質で視聴してください)。


そこは、この世界に触れられるならばもう墜落死したとしてもあきらめがつくじゃないかという感動的な秘境だった。人間が増える前の地球はこうだったという桁外れの原生地帯だった。そこでは常に南緯四十度線の暴風が吹き、一年を通じて雨が降り、五分間で気温が10度も上下する。原野の奥にある滑走路にはセスナ以外では7日間を掛け荷物を背負ってトレッキングしてくるしかない。もちろん山小屋もなにもない。滑走路メンテナンスのためのブルドーザーはおよそ一年を掛けて遙々現地まで運んだそうだ。


人間の姿だけでなく、道も、柵も、家畜も、送電線もすべてが存在しない。あるのは完全な自然だけ。


この巨大な原生地帯にて現在唯一住んでいるのが今は亡き伝説の開拓者デニーの娘さん。地球で考え得る最高の孤高の暮らしといえる。家の煙突から煙が出ていた。ああ、生きている。現在この原野は見渡す限り世界遺産に指定されているが、デニー家に先住権があり特別リースされている。

見たことのない色の原始の川が勢いよく原野を巡っている。この原野に滑走路ができて私のような野鳥オタクがセスナで飛んでくるようになる以前は、町に用事ができればキング一家の人々はまずこの原始の川をボートで下りタスマニア西海岸まで到達し、そこからタスマニア島を反時計回りで半周して州都ホバートへ数日掛けて向かったという。




セスナを使わなければ最寄りの人里や最寄りの道路まで徒歩往復十数日必要というウルトラ秘境。次来るときは必ずや徒歩で。タスマニア探鳥6からの続きでした。

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