Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

タスマニア探鳥6

キミミダレミツスイ

タスマニア島の固有種の一つであるキミミダレミツスイのトレードマークは黄色い耳(肉垂)。首を振ったりしたときにはこうして黄色い耳(肉垂)は翻ったりもする。


ベネットワラビーがシダを食べている。


この子は別個体だけど、やはり全然逃げないので24mmの広角レンズでも撮れたりする。


ハイイロオウギヒタキ。


Silver Peppermintの名で呼ばれるEucalyptus tenuiramis。タスマニア島南東部の固有種。非常に変わった樹皮をしている。Peppermint Gumはコアラが食べることができる数少ない種の一つと飼育係が先日解説していた。


タスマニアの地生蘭Rosy Hyacinth-orchid(Dipodium roseum)。ケアンズにも近縁のDipodiumは自生する。ローカルな植物図鑑はその土地でないと入手は非常に難しいというのがこれまでの教訓なので、旅先でもどんどん買うべき。
そして今回の滞在中のハイライトとして、これからあの絶滅寸前アカハラワカバインコの最後の聖域へ!タスマニア島南西部の広大な世界遺産、「タスマニアの原生地帯」の中にある。まったく未開でほぼ無人(住人は一家族三人だけ)で極限まで原生状態あることで世界遺産となった素晴らしいエリア。


主人公アカハラワカバインコはこの絵はがきによれば生存数は50羽程度となっているけど、2013年に出版された本では「残り20数羽」となり、もはやどうしようもない絶滅寸前種だ。今ならまだ間に合うが、2-3年後はもうわからないだろう。


その原生地域にはレーダーのない旧式のセスナ機で飛んでいくか、片道7日かけてトレッキングしていくしかない。有視界飛行をする旧式な機体なので悪天候に非常に弱く、雨が降っても雲が厚くてもフライトはキャンセル。おまえは熱気球か!?

実際私が予約していた日もキャンセルされ、日程に余裕があるのでスケジュールを組み替えて再度予約できたのだ。宿に泊まらないキャンプ組はそういうトラブルに強い。


靴底を清掃するように言われる。「人類など存在しない地域だから銃やエイズウイルス、エボラウイルスを持ち込むのは構わないが外来種は絶対にダメだ」というのはパイロットのジョーク。


いよいよ文明から隔絶された秘境中の秘境へ旧式セスナで飛ぶ。「タスマニアでは一週間誰にも会わずに釣りができる。あなたが望むならね」という釣り雑誌の一節を思い出し興奮してニヤニヤしている人。まあ内陸の砂漠地帯でも同じ事がいえる。誰にも会わなくていい、とはなんと魅力的な言葉だろう。


建物がないというレベルではない。未舗装道路も、牧場も農場も有史以来何も作られたことがないのがタスマニア南西部の世界遺産地帯だ。小さな機体は「吠える南緯40度線の海風」を受けて揺れに揺れ、前の席の女性は酔って何度も吐いていた。まあここで死ぬのは悪くないかなと私は思いながら窓の外の規格外の大自然を見ていた。

乗客はハイカーが3人、物好き観光客が二人、野鳥ファン一人(私)。眼下の景色はすべて動物とハイカーの物であり、建物も道も全くない。ハイカー達はこのセスナで奥地まで飛び、そこから一週間野山を歩いて戻ってくるらしいが私なら行きを歩きにしたいなあ。




その片道7日間かけて歩いて行く道がセスナの窓から見える。人類が地球に現れる前から何も変わっていない原野を一週間(往復歩くなら二週間)歩くっていうのはどう?


なお、この極限の原生地帯には一家族三名が暮らしているのもシビれる。もちろん現代では世界遺産指定であるけど先住権というものだ。
ついに原野の最果てにある空港、いや滑走路に到着。そこでは文明に帰るためセスナを待っている人が数人居た。つまり、昨日一昨日とフライトがキャンセルになっているので、二日ほどこの原野の滑走路でキャンプをしながらじっと飛行機を待っていたのである。この話しを冬山女である妹に話したら「素敵!最高!」と言っていた。そう思うよね。私もそうやって何日も置き去りにされてみたい!!

なお、帰りのセスナには搭乗希望者全員が乗りきれず二人のフランス人が更に置き去りにされた。しかも明日から2−3日は悪天候予報でたぶん迎えに来られない、とも。そんな彼らには先に文明へ帰る人々が残った食べ物やワインなどが差し入れていた。「置き去り」という単語が人生で一番飛び交った一日だった。(続く)

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