Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

変人現る

S氏(日本人、男性)に会ったのは全く偶然だった。
野鳥ファンの常宿カソワリハウスでバードウォッチングツアーをしてたら、「今日、急に1人日本人が泊まる事になったのよ。昨日の夜中23:00に電話して来て、迎えに来てって!びっくりしたわ」と聞いた。それがS氏(日本人、男性)の最初の気配だった。

カソワリハウス(写真)でバードウォッチングをしていた夕方頃、S氏(日本人、男性)はなんとまぁ、タクシーでカソワリハウスに現れた。その事自体も結構面白いのだけど、マニアックなバードウォッチャーを予想していた私はすこし驚いた。まず若いし、持ち物が双眼鏡や一眼レフではなく中型のビデオカメラと一脚、バックパック。
 なんだ?この青年は?
話を聞くと、ヒクイドリにはまってしまい野生の姿を求めてカソワリハウスに4泊すると言う。ケアンズからどうやってカソワリハウスまで来たかと言うと、キュランダ観光鉄道とタクシーを乗り継いで来て、帰りの時もその順らしい。なんか変な人だ。私がご案内していたバードウォッチングツアーのお二人もその夜カソワリハウスに泊まるので、自然好き同士盛り上がった。
S氏(日本人、男性)は「また連絡させてもらいます」と言っていた。
何日かして、会社の電話が鳴った。別の人がとったのだけど、「鳥とか動物園とかなんとかいっているから替わって」と私に振られた。声ですぐわかった。S氏(日本人、男性)だ。まだいたんだ。安宿暮らしをしながら各地、動物園を巡っていると言う。
トロピカルズーとジャプカイアボリジナルパーク、ナイトズーへ行きたいというので手配する。更に、「ケープトリビュレーションにある、面白い落書きがされてるというヒクイドリ注意の標識へ行きたい」と言う。わかんないよ、そんなの。
お昼頃に会社にチケットを取りに行く、というので待っていたけどなかなか来ない。ようやく姿を見せたのは2時。いまから市バスを使ってトロピカルズーとジャプカイアボリジナルパーク、ナイトズーを巡るのは厳しいのでは?と聞くと、「え?まだお昼前ですよね?」と。2時だってば。なんでも、時計を持っておらずビデオカメラの内蔵時計だけで生活しているらしい。変な人だ。
S氏(日本人、男性)は慌てて出て行った。後日聞いたのだけど、彼は動物探しと安宿暮らしの疲れのあまりジャプカイで市バスを降りるはずが寝過ごし、トロピカルズーも寝過ごし、パームコーブまで連れて行かれてしまっていた。そこからなんらかの方法でトロピカルズーまで戻り、ナイトズーもなんとか参加したらしい。その翌日はミコマスケイへ行き、野鳥保護のための立ち入り禁止区域に海から近づこうとして警備艇に追いかけられたりした。次回行く事があれば脚立を持って行こう、とも言ってた。更に翌日はケープトリビュレーションまで行き、例の落書きされたヒクイドリの道路標識を撮ってくるそうだ。
そんなS氏(日本人、男性)は、今日も会社に現れた。帰国日は夜明けと共にボタニックガーデンを歩き、そのあとジャプカイを一時間だけ覗いて日本への飛行機に滑り込むそうだ。お勧めの図鑑と図書館を私に尋ねた彼は、「早く行かないと閉まってしまう!」とまた飛び出して行った。
おもしろいなぁ。その気合いは。(人の事は全然言えないんだけど)
私も来月、アデレードに行ったら間違いなくああなる。
S氏(日本人、男性)と連絡先を交換した。彼の汗と涙の映像をDVDにして送ってくれるそうだ。写真もビデオも、捕り手の被写体への愛情がすごく出るからね、楽しみ。

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