Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

サイクロン「ヤシ」来襲前日のケアンズ-伝統の防災体制へ

サイクロンヤシへ備える市民ガソリンスタンドは外まで溢れる給油の列。こちらでは発電機を所有する家庭も特に珍しくないので、車への給油だけでなくガソリン缶などを用いてすごい量を確保して去っていく。


キャラバンを所有する少なからずのオージーはこの後家財道具を満載して南や内陸部へ向けてケアンズを続々脱出。史上最強のサイクロン接近の恐怖から無茶苦茶な追い越しが横行し、行政からもう遠方への避難は間に合わない事、落ち着く事の警告が出る。


停電と断水、断ガスは確実と思われスーパーから乾物や電池などがなくなる。

ケアンズで”サイクロンミサイル”という単語がある。サイクロンの暴風で空を舞い、ガラスを破壊する立て看板や街路樹、庭においてあるようなその他雑多なもの達の事。サイクロンミサイルに対抗して窓ガラスの補強が各地で進む。ドリルで穴をあけ、ベニヤ板や鉄板を打ち付けているところも多数あった。一般家庭や一般商店で、どこからそういう資材や道具がさっと出て来るんだ?

さすが「住民の大半が日曜大工や自動車整備の達人」といわれるだけはある。

この手のタープ的なものは全滅が予想され、取り外していきます。パレット15段重ねでフォークリフトに載る人。なんとか手が届いた。

トヨタ自動車ケアンズ他、各ディーラーでは新車が続々とどこかへ避難(どこへ、誰によって?)。みるみる車が町から消えていきます。バス会社もぞくぞくとバスを安全な大分水嶺山脈の裏側へ疎開させていく。

←水没や破損に備え博物館の展示物も回収されていきます。


動物園では高価なコアラを最優先保護対象とし、強度の高い職員用トイレやロッカー内などへ移送。


ケアンズの2つの病院からは症状の重い患者合計300名近くがオーストラリア空軍機でブリスベンまで1700kmの医療史上最大の大規模輸送を開始。


民間航空会社はケアンズ発の各便を増便して空路による脱出組の需要にぎりぎりまで対応し、その後午前10時をもって空港閉鎖、撤収。


グリーン島やハミルトン島などは全島閉鎖&全員離島。


物流の寸断が予想され、日用品を満載したタンカーがケアンズとタウンズビルへ向けて早めにブリスベンを出発。水難救助チームなどは全国から集合。平均的な国のレスキュー隊なみの装備と人員を誇るオーストラリアの災害支援民間ボランティア組織「SES」も各地から集結。警察や消防よりも凄いとされるSESは謎が多い。

←オーストラリアが誇る(笑)全国僻地隅々まで張り巡らされたプロパンガス簡単交換システムの真価を見せるときがついにきた!!停電に備えて充填には長い列が。


各地に設置された避難所にはどこからとも無く食事が配達される。

プールサイドの簡単な家具などはサイクロンミサイルになるので、吹き飛ばないようにプール内へ投げ込まれる。さすが発想がサイクロン慣れしている。産まれて以来、毎年数発のサイクロンに襲撃されてきた人々は。

土嚢が行政によって配布され、建物入り口などを固めていく市民。配布されるのは土と袋だけだけど、皆大きな土木用シャベルや一輪車持参で配布会場に集まる。なぜ皆が皆そういう物を所持しているのか?


その驚異的なケアンズの臨戦態勢の様子は全国放送される。

行政側は従来のテレビやラジオ、パトカーによる広報の他、家電話や携帯電話にも次々最新情報を勝手に送信(なんで番号とか知ってるんだ?)。それも英語だけではない。

更にツイッターやフェースブック、無線まであらゆる新旧技術を駆使して情報発信を続ける。日本ではそれらはテレビ局など民間が担当しているが、国家の権限やプレゼンスが非常に強いオーストラリアでは行政が行なっている。

こういった伝統の防災態勢のなか、深夜零時頃に人類史上最強のサイクロンの1つ、”ヤシ”が上陸した。経験豊富で屈強な人々と大自然との正面衝突である。

(後日追記:人類史上最強レベルの台風上陸による死者数=ゼロ 発電機を自宅で運用し一酸化炭素中毒で死亡した一人を除く)

Exit mobile version