Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

徒歩(リヤカー)によるオーストラリア横断を断念した青年に関して

オーストラリア横断を断念した青年に関してそれは内陸の小さなガソリンスタンドでの事だった。ピックアップトラックから降りてきた一目でカウボーイと分かる男性が「日本人か?」と話しかけてきた。


「町外れで動けなくなっていた23歳の日本人を拾った、リヤカーを引いて旅をしてきたがあまりに過酷なのでやめて日本に帰ろうと思っている、というような事を言っている」と。「しかし彼は英語がほとんど話せない、とりあえずそこのキャンプ場へ送り届けたがお前ちょっと話を聞いて助けてあげてくれないか。」


私「歩いてオーストラリアの大砂漠を越えるだと?…気違いか?」と返事してカウボーイと別れた。私は前日そのキャンプ場に滞在していたが一足先にその男は出発し、そして現実を悟って座り込んでいたらしい。結局仕事中で手が空いていなかった事も多少あるけど、私はそのキャンプ場へいって救いの手を伸ばす事はしなかった。キャンプ場まで送ってもらったのだからもう死ぬことはない。このあと大いに困り、未熟さを痛感するだろう。そして痛い目に遭って成長するといい ー そう思ったからだ。

オーストラリア横断を断念した青年のFacebook(当時)↓
https://www.facebook.com/suzukijumpeiaustralia

これによればこの男は五ヶ月間で5100kmを歩いて横断する計画だったらしいが、実際には五ヶ月で1840kmを進んだだけである。特に大きなアクシデントもないのに、予定の3分の1も進んでいない。そもそも日本だって徒歩での縦断に三ヶ月かかるのに(植村直己)、20倍以上も広く、その大半が無人地帯で砂漠なオーストラリアが五ヶ月で横断できるわけないだろう。それに彼の所持品やテントの張り方の画像から分かる事は、彼は別にアウトドアの達人ではない。「最長の無補給区間600km」と彼は息巻いているが、変な日本人野鳥ガイド(私のこと)はこんな辺境の砂漠を有力な仕事場の一つにしているわけで。一番驚いたのは、こんなごく一般人の挑戦をJALが後援となって航空券を提供していたことだったよ。

彼は1つだけ適切な判断をした。オーストラリア人のタフな男達でも考え込むシンプソン砂漠核心部へ突入する前に撤退した事である。さもなくば死んでいた。Cattle Stationのことを『日本でいう道の駅ですね』と書いてる時点で終わってる。この若者の捲土重来、再起を祈る。

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