Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

長期の無補給キャンプ(車ベース)で必要な改造 2: 走行充電システム

前回の投稿で、オーストラリアでは長期のキャンプにはまず冷蔵庫がいることを書いた。飲食店もコンビニも自販機もオーストラリアの僻地には存在しないし、気温45度の中ボランティアをしたらせめて冷たい飲み物やちゃんとした食事くらいの楽しみはあってもいい。

長期の無補給キャンプ(車ベース)で必要な改造 1: 冷蔵庫の話


そのためには冷蔵庫はもちろんとして、エンジンがかかっていない時でも冷蔵庫を駆動させ続けるシステムが必要になる。一般的に『デュアル・バッテリー』と呼ばれるのがそれで、車に二つ目のバッテリーを搭載して電源を賄う仕組み。私がこれまで数年間使って来たのはこれ↓

ベインテック製パワートップという商品。トランクにこれをおき、エンジンがかかっている間に100AHの内蔵バッテリーに充電されつつここから冷蔵庫その他の電源も取れる。今のランドクルーザーはトランク部にコンセントがあるので単にコンセントとこれを繋ぐだけで済むが、以前乗っていたX_Trailにはそんなファンシーなものはなかったので専門店で改造してもらって走行中に充電できるようにしていた。

$800ほどの比較的低コストでできるシステムながらよく数年間がんばった。三年目に劣化してきた内部のバッテリーだけ交換する($400)という延命措置もした。このシステムの欠点は充電速度が遅いことにある。はっきりと公表されていない時点で疑うべきだったが、経験上から推定5A程度と思われる。エンゲル冷蔵庫は24時間オンにしておくと20ー30AHほど消費するので、充電と消費のバランスが取れるには毎日5時間くらい走行する必要がある。まあそういう日もあるけど、そうじゃない日の方が多い。特に野鳥調査では一旦目的地に着いたら毎日走行するのは1時間程度になる。したがって2−3日後には全然充電が追いつかなくなり、駐車中にソーラーパネルを広げて不足分をなんとか補おうと(かなり大型パネルでないと無理)したり苦労することになる。

結局ソーラーパネル1枚だけを残して今年全部売却した。結局お勧めするのが


この分野では世界的に有名な南オーストラリアにある企業、レッドアーク製のDC チャージャー。$500くらい。


今ではコピー品も色々出ているが、こういう僻地中の僻地で使うものに関しては一切安物は買わないようにしている。壊れたら2週間それなしで過ごすしかないし、命にも関わるので。この製品は車のエンジンルームにインストールして使うように設計されたもので、なんといってもすごいのはその充電パワー。前述のベインテック製パワートップの充電力が推定5Aなのに対し、実に5倍の25Aを誇る。これであれば毎日1時間程度の走行でも24時間分の冷蔵庫分の電力を生み出してくれます。なんというパワーだ。


なおレッドアーク製のDC チャージャーをエンジンルームにインストールするには当然車ごと専用設計のブラケットが必要。$70程度。オーストラリアではこのクラスのものは「自分で作れ!」という風潮があって恐ろしい。


ラジエーター近くの狭い狭い隙間に収まったレッドアーク製のDCチャージャー。それからこのチャージャーにはもう一つ重要なスキルがある。それはソーラーパネルを接続でき、送られてくる電力を効率の高いMPPTと呼ばれる規格でバッテリーを充電してくれるところだ。普及価格帯の多くのソーラーパネルは効率の悪いPWMという規格で電力を送るが、レッドアーク製のDCチャージャーが上位のMPPTで処理してくれるのならPWM回路をバイパスして生電力をレッドアーク製のDCチャージャーに送ればいい。簡単にまとめれば『レッドアーク製のDCチャージャーに繋いだソーラーパネルの充電能力がかなりアップする』ということだ。


まだ改造はある。これまでのベインテック製パワートップはトランクに置いていたので、駐車して出かける際にソーラーパネルを外に広げたらそのケーブルを1cmほど開けた窓からトランクに引き込んでベインテック製パワートップに接続する必要があった。車に戻って来た時もベインテック製パワートップからソーラーパネルのケーブルを抜いて片付ける必要があった。これが結構面倒。

そこで、引き込み作業と片付け作業を短縮するためにソーラーパネルの差込口自体を車外、バンパーの上に追加した。これで毎回「少し開けた窓の隙間からケーブルを車内に引き込んで…」「また片付けて…」という作業がなくなる。ソーラーパネルをボンネット上やフロントガラスに広げたら、そのケーブルを刺す場所も車内やエンジンルームではなくて外にある。うーん便利。


これらの絵を描いたのは私だけど、配線はもちろん専門店にお願いした。無理に自分でやって間違ったり、うっかり外れたりショートしたら砂漠で私が死ぬことになるので。作業は丸一日かかって配線や保護材などを入れて約$600。

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