ヒメノドジロセスジムシクイを撮り直すことを断念し、まだ全く写真が撮れていない残る3種に時間を向けることにして僻地の山から離脱する。ただ来た道を引き返すわけではなく、南オーストラリアのガイドからもらっていた情報をもとにウエスタンセスジムシクイを探してみた。何しろ初日は機材を用意しているうちにハジロオーストラリアムシクイに入れ替わってしまったので。
いた!探し始めて30秒、車から15m(笑)。ものすごく情報通り、そして同じセスジムシクイでもウエスタンは何ていいやつなんだ。
再びハジロオーストラリアムシクイが出てきて囮になろうとするが、その技は初日に見せてもらった。同じ技は短期間に2回も私に通用しない。ウルウルして見せてもダメだ。
右がメス、左がオス。私1人のガチのトゥイッチならもうここで十分と離脱して次に向かいかねないが、今回は写真嗜好のT君がいるのでもう少し続ける。
青空を背負ったセスジムシクイの写真は少ない。なぜなら地面にいる小さい鳥だから。
スピニフェックスを根城にしている多くのセスジムシクイ類は、カクレクマノミの如く十分な守備力がスピニフェックスによって与えられるため飛翔力が衰え、短距離を低く飛ぶ程度の翼しか持たない。ウエスタンセスジムシクイはスピニフェックスではなくてこのもっと優しそうなブルーブッシュが根城だが、羽に関しては同じような感じ。
傾斜地でのメスオスの絡み。もういいじゃん、次に行くぞ。T君はこれだけ撮ってもまだここにいたそうだったが、あと2種類手付かずで2日しかないんだぞ。
ちなみに情報源の南オーストラリア州のガイドとは、私がこの間2週間もヨーク半島などで彼と彼のグループを案内し続けた関係による特別な情報提供である。そうでなければプロは自分の飯の種である希少種の情報を他のガイドに明かしたりしない。インターネット上に見つかる野鳥位置情報は例外的な1−2人を除いて現役のプロによるものではなく、そのほぼ全てがアマチュアが嬉々として投稿しているものであることに注意。
4種のうち2種目のウエスタンセスジムシクイが完了したところで最寄りの町に戻って残り少なくなったガソリンの補給を…と思ったら廃業していた。まあオーストラリアの田舎では珍しいことではないのでもう一つ先の町まで辿り着く余力は残してあった。その町キンバには行く予定はなかったことになるけど、そんな事情でキンバに向かうことになりT君が喜んだ。なぜなら出発数日前、おおよそのルート図を彼にメールしてあったのだけど、それを見て彼はルート上(当時)にあるキンバの町に巨大モモイロインコの銅像があることをインスタで知った。彼のパートナーが大のモモイロインコ好きらしく、そこには是非行きたいと思っていたらしい。あてにしていたガソリンスタンドの廃業で転がり込んできた巨大モモイロインコ巡礼のチャンス。
それがコイツだーーっ!!
これが地方都市にあってもそんなに面白くないが、周囲数十キロ誰も住んでいない荒野の小さな町に突然派手なモモイロインコがそびえたっている図はなかなか笑える。まあ苦笑しただけで車を発進させようとした時、奥のお店からモモイロインコのぬいぐるみを抱き抱えた女性客が去っていくではないか。買ってるし!まあ、我々もそれくらいしなきゃいけないんじゃないですか?と入店する。
まあネタ的にはこの辺にしてまだ午後の早い時間でありターゲット3番目のコパーバックウズラチメドリに挑戦することにした(ウエスタンセスジムシクイもそうだけど、コパーバックウズラチメドリにも和名がまだないので便宜上ローマ字読み表記です)。この広大な疎林の地面を単独で歩いているような希少種をどうやって探していくか?再び登場するのは例の南オーストラリア州のガイドからの特別情報である。教えられた通りに国道をおり、獣道みたいなのを車でどんどん進む。普段のランクルでチェーンソーやスペアタイヤを二つ積んでいる時と違って、レンタカーの初期装備Rav4に乗って素性不明の獣道を真っ直ぐ奥に進んでいく恐怖は、真っ当な人生を歩んでいる人は一生感じることのない種の恐怖だ。半信半疑になりながらガイドから『ここのダムまで進め』と言われていたところまで到達する。そもそもここは私有地なのでは?大丈夫なのか?