Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

オーストラリアの不思議な物〜4【パンク修理コンプレッサー】

パンク修理コンプレッサー

これも一目見て何かわかる日本人は稀だと思う。これは車のタイヤのパンク修理のための携帯式コンプレッサー。

まず、日本ではもはやスペアタイヤすら搭載されていないというからオーストラリアから見ればもうそれは別の星のような気もする。オーストラリアの都市部以外をフィールドにしていればそこは未舗装だらけであり、時間の問題でパンクする。じゃあスペアタイヤに交換すればいいじゃない、というのが普通の反応かもしれないが、スペアタイヤに交換した後にさらにパンクしたらどうする?私の周囲での最多1日パンク記録は4回である。

スペアタイヤ1本に依存していた場合、二度目以上のパンクでもう「詰む」ので僻地で進退窮まることになる。世界で一番人間の住まない土地であるオーストラリアのアウトバックにおいて、携帯電話で助けを呼べるとか、通りがかりの誰かが助けてくれるならそれは幸運である。

ではどうするかだ。

スペアタイヤを三本とか屋根に積んでいる四駆も見ないことはないが、重いし高いので通常はこのコンプレッサーの出番だ。もしパンクしたらスペアタイヤに交換するのではなく、タイヤ修理キットで穴を塞ぎコンプレッサーで空気を入れて走行再開する。またパンクしたら、再びタイヤ修理キットで穴を塞ぎコンプレッサーで空気を入れて走行再開する。これの繰り返しだ。前述のように1日4回パンクしても凌げる。

ただ例外はある。パンク修理キットで塞げないような大穴を開けてしまった場合やタイヤ側面が裂けたような場合は直しようがないので、そうなって初めて最後の切り札「スペアタイヤ」を投入する。スペアタイヤは最後まで温存して、普通のパンクは修理キット+コンプレッサーで突き進むのがオーストラリアである。

先日の三週間の鳥類調査キャンプでは、「義務装備」の中に「スペアタイヤ2本、パンク修理キット+コンプレッサー」となっていた。スペアタイヤが2本というのは、最後の切り札を二重に持てという意味である。これらが揃っていなければキャンプにも行けない。

オーストラリアでは4WDというのはこういう世界であり、そのうえ年間数万キロを走行するのも珍しくない。2年落ちの車が10万キロとか普通に走っていることに中古車市場にて驚くだろう。だから仮にランドクルーザーのような車に日本でたった年間一万キロ乗っているからといって、オーストラリアの4WD文化のからすればそれは「4WDごっこ」に見えるのは致し方ないだろう。

オーストラリアでのように一日に4回もパンクしたり、その修理用にコンプレッサーが車に積んであったり、悪路を突き崩しながら進むため助手席の人間は大型シャベルを抱きかかえて座席に座っていたりするだろうか?車載アマチュア無線、水100L、ガソリン携行缶30L、スペアタイヤ二個を装備しているだろうか?道を塞いでいる倒木を撤去して進むためにノコギリやできればチェーンソーを積んでいるだろうか?大型動物を撥ね飛ばすための鉄のカンバルーバーや川を横断するためのシュノーケルがはじめから市販車に装備されているだろうか?オフロード走行のスクールで研修を積んでいるだろうか?救助したり、救助されたりするために鉄のチェーンを積んでいるだろうか?日本ではたぶん一つも該当しないのでは。


しかもこれらは決して車マニアや一部の愛好家の世界ではなく、主婦やおじいさんもお姉さんも日常としてしていることである。この国で東海岸部とパース周辺を除けば4WDを操ることは避けて通れないことであり、決してレジャーとしてオフロード走行をしているわけではないので、それをからかったりするべきではない。水しぶきを上げて川を車で横切って通院、未舗装道路を200km激走して出勤、最寄りの200km先のガソリンスタンドまでは無人区間、とかなのですよ。オーストラリアでは車はなくても代替できるような嗜好品ではなく、人生のかなりの部分を載せた生きるための必需品だと思う。恐らく携帯電話以上の存在だ。

レジャーとしてオフロード走行を楽しんでいるグループはさらに途方もない事をしているので雑誌を買ってみるといい。私はそう言ったマニアではなく、できれば普通の道を走っていたいと思っているがそうはいかない。

→オーストラリアの4WD文化ここにあり!私が遭遇した『ケープヨーク深南部 洪水編


おまけで電動ドリル。以外とよく使う。

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