Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

過去のリビングインケアンズ連載記事(簡略版) 1

十一月の最後の日、リビングインケアンズ主催で入門者向け野鳥観察会を行った。前日までストームが一週間続き、当日も怪しげな天候の中で少年からご年配の方まで参加して楽しい時間となった。季節柄、幼鳥や抱卵、巣作りといった生き生きとした姿を見られ、とどめに一メートル級のナミヘビの仲間を飲み込むワライカワセミ幼鳥を間近で(それこそ二メートル以内)見た。町の中心部から車で5分の緑地で、こういった光景を見られるのは素晴らしい事だし、この豊かさをもっと多くのかたに知ってほしいとも思う。来られなかったかたも、またの機会があれば是非どうぞ。


「バードウォッチングをするには何が必要ですか」と聞かれるので紹介しよう。基本的には双眼鏡と小型の図鑑で十分。少ないでしょう?ただ、双眼鏡は許される限りよいものを使ってほしい。ウォッチング、という言葉の通り双眼鏡は生命線であり、正直なところオペラグラスとか手のひらに乗ってしまうような双眼鏡なら無い方いい気がする。10ドル程度のものから3000ドルを超えるようなものまであるけど、大事にすれば半永久的に使えるモノなのでなるべく良いものを。ケアンズでは、スペンス通り240番にサンコーストオプティクスという光学機器のお店があり自由に手に取って覗けるようになっている。双眼鏡の倍率にはいろいろあるけれど、7倍、8倍辺りが使いやすくお勧め。10倍以上はベテラン向けと言える。倍率以外では双眼鏡の口径も問題になる。口径が大きい程見やすくなる反面、重く高価になってくる。42ミリが一般的だけど女性の方などでどうしても重さが気になる場合は32ミリなども使用者が多い。よい双眼鏡を除いた瞬間、「うぉっ!?」という声が自然に出るはず。「双眼鏡の形をしているおもちゃ」とは違い、それの双眼鏡はこれから長い間あなたの目として活躍してくれるはずだ。

そして図鑑はというと、写真の「ザ・スレーター・フィールドガイド」がお勧め。理由は、必要充分な内容。変形サイズでウエストポーチやカーゴパンツのポケットに入る為、携帯しやすく取り出しやすい事と利用者が多く、「今の鳥は何ページの何何」といった復習が仲間としやすい事だ。どこの書店でも普通置いてあるし。

これだけで、基本的に準備は完了。一生どこでも楽しめる趣味としては安いものではないかと。
初めたての頃は観察する野鳥全てが見慣れないものであり、ケアンズは特別に種類が豊富な事もあり覚えきれず、何が何だか分からないかもしれない。でも識別できる野鳥が一つ一つ増えていき、一番楽しい時期だと思う。ベテランのバードウォッチャーに同行すると、頭上を一瞬飛んでいっただけの鳥をこともなげに識別し驚嘆することがあると思うけど、「視力が異常に良い」とかでは普通は無い。誰しも、鳩が素早く横切っていって後ろ姿しか見えなくても今のは鳩だったと認識できると思う。それは、これまでの人生で数限りなく目にした鳥の場合は体の一部分しか見えなくても、一瞬で通り過ぎても、記憶と自動で照合されるためだ。ベテランはそうやってドバトのように認識できる種類が何百とあるということ。姿だけではなくて鳴き声もそう。ドバトの鳴き声はみんな知ってる。それが仮に二百種類に増えたらすごい事で、今までBGMだった鳴き声の持ち主が全部分かったら?日常も素敵に楽しくなる。

慌てず、焦らず続けてもらいたい。バードウォッチングは高齢になってもずっと続けられる趣味だ。

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