Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

フクロムササビ調査2023 中編

嵐の前夕方になってメンバーが集合し、早めの夕食をとって日没に合わせて調査に出よう、というタイミングで突風と共に雨が降り出した。それはキャラバンの屋根を大きく持ち上げるような風の強さだったので、急いでその辺のビニール紐と配管を使って支柱を建てた。この即席の支柱はその後三日間の嵐に無事に耐え、我々の食事・打ち合わせスペースを守り続けた。

日が落ちて早速調査地点まで移動。平均的には一晩で1kmx5箇所を調査するのだけど、二つ目を終えたぐらいの時にとうとう我々のかろうじて保っていた幸運がそこで尽きた。

まあ、野外活動は無理よねという本格的な雨。歩くだけでいいなら可能だけどこの雨の中でライトと双眼鏡を使って樹上のフクロムササビを探していくのは非常に厳しい。仮にやったとして、そんな極端な条件の観察データは他の年度とあまり比べようがないのでやる意味がない。ということで狭い車内に四人、雨が止むのを待った。ここでネット回線がないのが苦しい(この雨雲レーダーはベースキャンプまで帰った後に見たもの)。ネットにつながれば雨雲の動きとかも見られるのだけど、ただ情報が得られないまま1時間半ほど車内で待って諦めて撤収した。1kmx5箇所を調査する予定がわずか2か所。明日の調査が苦しくなった上に、明日雨が降らないという保証などないというかかなりの確率で降りそうだという確信があった。困ったなあ。

夜遅くベースキャンプに戻ると、芝生だった地面が水溜まりが広がっており一名が浸水したテントを断念してキャラバンで寝ることにして撤収。私のタスマン2はほぼ無傷だった。張る場所を風裏かつ高台に選んでいるのと、テントの下に(中に、ではない)銀マットを引いて嵩上げしたりしていたから、でそこは25年近い野営経験が生きている。


ちなみにキャラバンの中はこんな感じだった(昼間の様子)。

翌朝。あまり働いた感のない中ながら夜になってくれないと調査はできないのでそれまでの間に近くの溶岩洞を見にいく。

これは天井が崩落しているのを上から見下ろした図。溶岩洞は日本では馴染みがないと思うけど、マグマが流れ出した時に外側は空気で冷えて固まるけど内側は熱いドロドロのまま流れていった結果、トンネル上に形成される洞窟のことを言う。いわゆる外はカリッと、中はモチモチと言うやつだ。年月とともに天井はあちこちで崩落している。ここでAlied Rock Wallabyを見た。


この溶岩洞に生えていたイチジクの木にオオニワシドリが鳴いていたが、鳴き声が違うような気がしてちゃんと見てみるとマダラニワシドリだった。これまででもっともケアンズから近いところで見たマダラニワシドリはマウントアイザだから、一気に800kmくらい東へ向けて見たことがある範囲を更新したことになる。
午後は暑すぎるのでテントで仮眠。このリチウム電池扇風機のおかげで暑いながらもテントで眠ることができた。充電式の扇風機はこれまでもあったけど、ここまで小さくなった。

1−2年前に見つかったばかりの新種のトカゲを見つけた、爬虫類班が帰ってきた。これがトカゲ!ミミズの間違いじゃないのかと言うほど細くて小さい。前足はないが極めて小さい後ろ足だけ持っているSliderというグループで、正式名をLeaden-bellied-fine-lined Slider(Lerista vanderduysi)という。よくまあこんなものを木の下から見つけるもんだね。


哺乳類班も負けてはいられない。これが調査対象のキタフクロムササビだ。オーストラリア中部や南部のフクロムササビが茶色っぽいのに対しモノトーンで、頭も耳も小さく尾が長い。この夜、我々は昨日の遅れを取り戻すように働き七か所を調査。途中30分ほどの雨宿りは強いられたものの深夜0時まで展開し、ほぼ予定通りの調査速度に回復した。何しろ明日の晩にまた大雨にならないという保証なんて全くないからね。

Striped Burrowing Frog。嵐にも良いことはあり、普段あまり見ないカエル類が道端にたくさん観察できる。

これはDubious Dtella。

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