Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

ヨーキーズノブにおける超大型カジノリゾート開発に反対します

酸性化土壌

ケアンズ市対岸のイーストトリニティ地区にまた来た(注 地区全体は一般立ち入り禁止です)。70年代にサトウキビ畑を作る為にマングローブ地帯を堤防で仕切り水分を排出した結果、土中に大量に含まれている黄鉄鉱が地表に現れ空気と反応して硫酸となり激しい土壌酸性化を引き起こした。その硫酸は満潮のたびに海水にさらわれてトリニティ湾へ流れ込み、”クィーンズランド州随一”といわれたバラマンディの産卵場だったエリアを壊滅させ、陸上においてももちろんサトウキビなど育つわけがなかった。


↑ここは、惨劇から40年経った今でもあえて硫酸を中和せず汚染されたまま残してある一角。もちろん、後世に伝えるため。pH2-3という強酸性で作物を作ろうとか、それが失敗した後はリゾート開発しようとか、アホかという他は無い。開発を主張する人は先ず自分がこの硫酸の中に手を漬けてみるといい。


このどこかで見たような図面は、この硫酸地獄湿地に蓋をして、リゾート/新興住宅街として再計画しようぜ!という当時の開発図面である。ゴルフコース、スポーツスタジアム、プール、カジノ、分譲地…現在話題になっているヨーキーズノブでの超大型カジノリゾート開発計画と似ている。ケアンズ沿岸部の土壌は基本的にこの黄鉄鉱で、ヨーキーズノブでもここイーストトリニティ地区で起きた惨劇に見舞われる可能性は十分あると周囲の研究者は口を揃えている。


この硫酸地獄と化した湿地を中性化するためにクィーンズランド州政府は10年以上の歳月と膨大な予算と人員を投入し、前線では懸命な中性化作業が続けられてる。今でも。なにしろケアンズ市中心部はわずか数百メートル対岸であり、硫酸が流れ込む先はエスプラネードであり、ひいてはグレートバリアリーフであり、観光業、漁業に深刻な被害を出すからである。この事業に興味がある人は過去の
 イーストトリニティ保護区での第三次鳥類調査
 土壌中性化の試み
 イーストトリニティ保護区での鳥類調査
などもどうぞ。なお私はここで鳥類調査をしてきた関係や、環境保全/国土管理を学んでいた際のフィールドでもあったので現地科学者や地元アボリジニレンジャー組織と親交があり、視察などもアレンジできると思います。
←現地で中性化作業にあたる科学者と、その話を聞く学生達。私以外は大多数がアボリジニというクラスで揉まれて成長した(昔話)。

政治家や開発業者はすぐ「地元雇用への寄与」を旗印にするが、ケアンズ商工会議所の発表によれば現時点でケアンズの失業率は5%と過去5年間で最も低い値となっている。これは統計によっては中国の失業率よりも低いレベル。失業率がゼロになることはどこの自治体や国においても永遠に無く、仕事が無い5%の人達に関してはかわいそうだが奮起を期待すれば十分で、自然や健康を犠牲にしてまでカジノなどという気持ち悪い雇用確保は無用である。
無謀な開発のせいで、事実ここで長期に渡っていったいどれだけの被害を出しているというのだ。このイーストトリニティの件は公共放送ABCが特番にしています。興味があるかたはこちらからご覧下さい。Youtube上には今は無いようです。

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