Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

コモンシギ、ヒバリシギ ダブルTwitchの記録

タイトルの「Twitch」とは、バードウォッチングの世界において本来分布しない極めて珍しい野鳥がある国に迷い込んだ場合にそれを見に遠路を駆けつける狂った行動の事だ。自宅から車で行けるような距離のものは普通Twitchとは言わず飛行機とレンタカーを使って駆けつけるスタイルを主流とする。ほとんどの場合相手はたった一羽の鳥であり飛行機とタクシーを乗り継いで駆けつけたとしてもまだそこにいる保証は全く無い。

オーストラリアがクリスマスに沸く12月下旬。ケアンズから1700km離れたブリスベンにコモンシギが出ているという内輪のニュースを私は毎日気にしていた。ブリスベンならまだケアンズと同じ州であり国内旅行としてはこれでも近い方になる。小さい日本国内をうろちょろするのとは桁が違う。「そうねぇ…」「しかしねぇ…」と見ているうちにコモンシギに加えてヒバリシギも同じ場所に出ているという!これは業界用語でダブルトゥイッチ状態といい、オーストラリア本土でダブルトゥイッチなら行く(離島は除く)、という自主規制をクリアしたことになる。この自主規制がないと破産するからな。

だがクリスマスの国民大移動シーズンは航空券がとても高く、それが落ち着くのが30日になってから。そこで「12月29日の時点でまだダブルトゥイッチ状態であれば航空券を買う」というラインを設定して落ち着かない3−4日を過ごした。仕事をしていても、家にいても心は常にコモンシギとヒバリシギのことを考えていた。リミットの29日の朝、コモンシギもヒバリシギもまだ出ていることを確認した私は朝の3時に起床しアサートン高原の自宅を手荷物だけ持って出発。そういえば一年前の今日、私はコシジロアジサシTwitchのためシドニーへ飛んだな。朝5時にジェットスター航空のフライトでブリスベンに飛び立った。前途を祝うかのごとく、座席は非常口前の有料席にアップグレードされていた。そういえば今月タスマニアから帰ってくるフライトでもアップグレードされていたな。

足元が広い快適な座席と、朝3時から起きているという寝不足で私はフライトの大半を寝て過ごしたが、これがいけなかった。私は変な姿勢で寝ると強烈な肩凝りを生じる習性があり、それはしばらくして強い頭痛や吐き気を伴う。

ブリスベン空港からタクシーではなくウーバーで人気のないコンビナート港へ向かい「こんなところで降りてどうするんだ?車でも買うのか?」と訝しがられながら早速湿地でコモンシギとヒバリシギを探し始める朝9時頃。肩凝りと頭痛、吐き気で体調が悪い。と、遠くに3人ほどの野鳥ファンの人影が見えたのであっちだなと歩いていくとちょうど彼らはコモンシギを見て帰るところだった。
コモンシギ

オーストラリア710種目。コモンシギ。

ただヒバリシギはいなかったという。「スコープがないと難しいだろうね」と言いつつ帰っていく3人組。まあね、スコープは必要だけど手荷物だけのフライトでは持ってこれないですよ。私はしばらくコモンシギを追いかけ色々なショットを撮りつつヒバリシギがいないか探したが見つからないまま太陽はどんどん高くなって行った。
ケアンズでは少ないキリアイが沢山いたり夏羽のクロハラアジサシが飛んでたりと撮るものは多少あるのだけどヒバリシギは見つからず、おまけに「車もないのにどこから来たんだ」と職務質問を受けるとかもあって頭痛薬を飲んで一旦ダウン。観察小屋の外のコンクリートで多分1時間以上横になっていた。

コモンシギはずっとウロウロしてるんだけどな…。ダブルトゥイッチじゃないと行かない、というのはこういう見つからなかった時のダメージを半減させるためだ。少なくとも1種は増えたんだから無駄ではなかった…と言い訳を考え出した午後2時(もう5時間経過)。


はっ…(゚o゚;;?


なんだ!あの半分くらいしかないサイズのウズラシギは!!!


ヒバリシギ来たー! ♪───O(≧∇≦)O────♪


足が尾よりも飛び出る識別点もクリア。オーストラリア711種目になるヒバリシギ。ダブルトゥイッチは完全に達成された。

ジェットスター航空も喜んでいるようで、私の座席は帰りも非常口前の有料席にアップグレードされていた。これで3フライト連続である。

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