Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

カオグロキノボリカンガルー特集

カオグロキノボリカンガルーアサートン高原の固有種、カオグロキノボリカンガルーがぼーっとしていた。

オーストラリア区に生息するキノボリカンガルーの仲間の中では最小の種類になる。彼らキノボリカンガルーは、熱帯雨林から草原へ展開して行ったカンガルーの古代の流れに逆行して、草原へ出て行ったのに再びUターンして熱帯雨林に戻って来た動物と考えられている。海から陸へ進出しておきながらまた海へ戻って行ったほ乳類クジラなどと同じ。

学名 Dendrolagus lumholtzi
英名 Lumholtz’s Tree Kangaroo



キノボリカンガルーはカンガルーなのに後ずさりでき、ものを掴めて、右足と左足をばらばらに動かせ、かなり高い所から飛び降りても平気である。車を運転中、いきなり前方の路上に空から落ちてきたと思ったらボールのように何度もバウンドして消えていった事がある。図鑑(Steve Parish)では「15m以上の高さから飛び降りても大丈夫」とある。それは、どの程度のサンプル数から割り出したものなんだ?



彼らは樹上で生活する夜行性動物で、かつあまり動き回らないし単独行動ためあまり明るい時間帯で見かけることは多くない。写真のカオグロキノボリカンガルーは、「かものはしに遭い隊」に招待してもらった際に出会ったもの。その他の動物関係ツアーでも夜間に偶発的に会う事は特別珍しくないけど、「かものはしに遭い隊」ではキノボリカンガルーを探す専用の時間が組まれているからその分出会い易い。
昔撮った夜間のキノボリカンガルー親子。繁殖は隔年。
そう、彼らはこういう面積の広い葉(例えばキャンドルナットのような)を好んで食べている気がする。サイズ的にもあまり競合するような生き物もいない。

我が家のカオグロキノボリカンガルーのキャンバスアート。こちらケアンズでは、このように色々なモチーフやマスコットに起用されて割と有名な動物。しかしこの長い尾は写真に於いても絵に於いても構図のバランスを取り辛い厄介なものだ。

これだけ長ければポッサムやクモザルなどのように尾を枝に巻き付けてぶら下がったりとか、自分の尾を掴んで枝に戻ったりとか出来ればかなり有効な機構となるはずだが実際はそういったアクロバティックな動きはせず、コアラ的なかなりのろまな動物である。木から降りるときも、普通にお尻を下に、頭を上にしてずりずりと人間のように降りて来る。

彼らキノボリカンガルーは森、それも木と木が密集して重なり合っているような高密度の森林に生活を依存しており、ケアンズ周辺の世界遺産「湿潤熱帯地域(Wet Tropics)」のキーストーン種であり、独特の外見と存在感から象徴種(flagship species)でもあるといえる。

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