Site icon 【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド 太田祐(AAK Nature Watch)

ニオイネズミカンガルー特集

ニオイネズミカンガルー

ニオイネズミカンガルーに関して基本的な事については数年前に書いたけどもう少し掘り下げてみようかと。
原始哺乳類であるカモノハシが他の原題の哺乳類の特徴と噛み合ないのと同じように、ニオイネズミカンガルーも原始的な状態のカンガルーと言われ外見以外にもカンガルー類とは異なる点が多い。5本指だ、夜行性でない、双子を産む、跳ねない。カンガルー類の原型はこのニオイネズミカンガルータイプであり、一般的に言うカンガルーとは近現代に熱帯雨林を出て草原に進出して大型化したものと考えられている。


そして1997年にジェームスクック大学院生だったAJ Denissによってニオイネズミカンガルーが「植林をしている」事が報告された。
 https://eprints.jcu.edu.au/17401/
それによるとニオイネズミカンガルーは樹冠から降ってくる木の実が豊富な時期に食べだめをして餌が少ない冬の時期を乗り切ろうとする。それに加え各地に貯食をしていることが発見された。各地に埋蔵される木の実の数は1シーズンで1000個にも達し、しかも埋めた場所をあまり覚えていないという情けない面のおかげで埋められた実の少なくない割合が各地で発芽する。しかも適度に親木から離れて分散して。

熱帯雨林の植林についてはヒクイドリが代名詞だが、彼らは一カ所にまとめてどばっと糞をしていくので密集して発芽後に激しい競争にさらされるのは想像に難くない。そもそも、糞に含まれる種子のかなりの割合が発芽前にオオハダカオネズミなどによって食べられてしまう事も報告されている。また、ヒクイドリはその巨体の為に歩き回れる場所はある程度制限され登山道や獣道を頻繁に利用し、そういった路上で発芽しても人や様々な動物に容易に踏みつぶされたりして植物が無事大きく成長する可能性は低くなる。

ニオイネズミカンガルーの場合は量は少ないが、小さな体を活かして密林中を動き回りあちこちに種子を(後で食べるつもりで)見つからないように埋めて、そしてそのまま一部を忘れてしまうという特徴からしてヒクイドリの大量投棄型種子分散よりもより効率的な植林活動をしていると言えそうだ。

学名 Hypsiprymnodon moschatus
英名 Musky Rat Kangaroo
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