【公式】オーストラリア唯一の日本語専門バードウォッチングガイド　太田祐（AAK Nature Watch）

セスジムシクイ調査の任から解放された我々は、ケアンズへ戻る他のメンバーとは異なってさらにチャンネルカントリーと総称されるクィーンズランド州最西部のアウトバック地方へ転戦してバードウオッチングへ。鉱山の街マウントアイザの南部や西部に広がる広大な無人地帯は私のハートランドである。いくつもの忘れがたい思い出がある。




おはようセキセイ達。


ケアンズ郊外では年によっていたりいなかったりする野生のセキセイインコも、チャンネルカントリーにおいては10分の10。


I love this place.

そこは人間どころか木さえ存在しないオーストラリア式砂漠、アウトバック。川も丘もなく、無限の大荒野が延々と続くだけだ。それを幸せと捉える人間が沢山いる一方で、「寂しい」と感じる人もいる。

強固な自分のワールドを確立しておらず、周囲を気にする人生が染み込んでいる人はアウトバックのように自分以外何もないところへ行くとどうなるんだろう。あとよく喋る人とかも。レストランや美容院とかで、私が一ヶ月かかって発する量のお喋りを一時間でこなす女性を見かける。
もう少し静かにして、その分抽象的なことを大事にしたり後世の役に立つことにも時間を使えるようになるといいと思います。人間は動物とは違うのだから。




チャンネルカントリーまで来ればクロオビトビもありえなくないのだけど普通のオーストラリアカタグロトビ。


オーストラリアカタグロトビのような美しい鳥が控え選手のように扱われるのが贅沢。というかさ、脚にカンナ屑みたいなのをくっつけているのは何？？
現役なのか廃墟なのか判断に迷う風車施設。ここは数年前の仕事の時、敗色濃厚な中で逆転ホームラン的な鳥の大集結に遭遇したところなのだ。今回は何もいなかったけどな。アウトバックにおいては過去の情報は特にアテにならない。

アウトバックの世紀末的な雰囲気は、オーストラリア映画マッドマックスシリーズや北斗の拳の世界そのものだ。




セキセイインコ達を撮影していたら、上空からすごい音が接近。

ゴー

バリバリバリ！

ズビャーー!!

その隕石が落下するような音を立てて上空から突っ込んできたのはオナガイヌワシだった！彼は私の正面15mほどの地表にいる何かに目にも映らない速さで襲い掛かった後、すぐに飛び去った。しばらくは感動して夢見心地だった。タカラ君は「今の音は一生忘れない…」と言っていた。なぜか以前から私の正面に突っ込んでくる猛禽類は多いが、今回は背後から来たと思う。

このシーンとは別に、オナガイヌワシに関しては無人の動体検知カメラを仕掛けた。失敗することも多いが、今回はなかなか面白い映像があるのでまた今度。自宅に戻った時にでも…


幼いセキセイインコは超かわいい。


近いうちに第一線を退くことが決まっている愛車で、私が世界でいちばん好きな土地にこれて良かったよ。

300kmくらい誰もいない平原。この地方はミンミンライトと呼ばれる謎の光の玉が漆黒の夜の平原に度々目撃されてきた（論文もある）。そりゃあこんな宇宙のように広いところだもの、UFOだか妖怪だか知らないが、跳ね回りたくもなるだろうさ。


私にとってはこの世でいちばん美しい場所。
急に死んでしまうことがあったら、遺灰はこの辺に撒いて欲しいと思う。セキセイインコの大群が飛んでいるあたりで。